第126回2013年米国での特許取得件数ランキング
2013年の米国での特許取得件数ランキングがIFI Claims Patent Servicesより発表されました(http://ificlaims.com/index.php?page=misc_top_50_2013&keep_session=871953810)。IBM(International Business Machine)が1位でした。日本企業は4社もトップテン入りしており、キャノン、SONY, パナソニック、東芝でした。このブログでよく名前の挙がるGoogleは11位、Appleは13位であり、上位ではありますがトップ10には入っていません。
訴訟や買収でニュースを騒がすのと特許取得件数が多いのとは、必ずしも一致しないようです。しかし特許大国米国の特許取得件数を見るのが、特許業界の動向を予測するのに良い材料なのでしょう。トップ10に日本企業が4社、米国企業3社、あとは韓国企業2社と台湾企業1社ずつです。意外なのは、中国企業が30位までに1社も入っていなかったということです。中国は特許を取得する国としては注目されていますが、中国企業自身が出願することは少ないようです。
ところで米国出願は今や、USPTOのEFS-Webというサイト(http://www.uspto.gov/patents/process/file/efs/)で誰でも可能であることはご存知でしょうか?特許業界の方には当たり前かも知れませんが、意外にこの事実を知らない人は多いようです。米国以外からでも。つまり日本からでも自宅のパソコンを使って、PDFファイルで米国特許庁に特許を申請できます。専用のソフトウエアも必要ありません。
私はこのサイトの使い方について講演会を行ったことがあります。逐次、説明していきたいと思います。
ところで、前回、Motorola MobilityとAppleの訴訟でAppleが勝訴したと伝えましたが、その続きです。AppleのiPhoneがMotorola Mobilityの特許を侵害していると訴えられ、ITCでAppleは非侵害とされ、連邦巡回控訴裁判所でもこの判断が支持されました。
連邦控訴裁判所の判決(http://www.cafc.uscourts.gov/images/stories/opinions-orders/12-1666.Opinion.1-8-2014.1.PDF)を更に検討しました。少しずつ読んでいますが、読めば読むほどおもしろい判例です。Motorolaの米国特許6,272,333号のクレーム12を侵害したかどうかが争点になっています。このクレームの
"in response to a change in accessibility of an application,"
"to communicate the change in accessibility of an application to the fixed portion of the wireless communication system"
の文言が更に争点です。
結論を言うと、"a change"が一つのchangeか1つ以上のchangeかが問題になっています。
また「push notification」(プッシュ通知)もトピックになっています。プッシュ通知はユーザが操作しなくても、変化を通知してくれる機能です。そして"push- enabled application"を削除する場合に起こる変化について、一つかそれ以上かで"a change"の解釈が問題になってきます。
Motorolaは"a"を「one or more」と解釈し、Appleの製品はクレームの要件を充たすと主張しましたが、これは違うというのが裁判所の判断でした。
Motorolaの主張は、push-enabled applicationの削除により、アプリケーションレジストリが更新され、固定化部分(fixed portion)に対し、その削除されたアプリケーションのプッシュ通知も削除されることが通知されるというものです。
つまり"change in accessibility of deletion"とは、アクセス可能性の変化ではなく、固定化部分に通知されるのは、アプリケーションのプッシュ通知が削除されるというメッセージであるというものです。
つまりMotorolaのいうchangeとは、push-enabled applicationの削除に関連した変化と、push notificationの削除に関連したアクセス可能性の変化であると裁判所は判断しています。これが"a change"が一つか、"one or more"の解釈に関係してくるのでしょう。
来週さらに、判例の先を読み進めていきたいと思います。
今週のポイント
- 2013年の米国での特許取得件数ランキングが発表され、IBM(International Business Machine)が1位であり、日本企業は4社(キャノン、SONY, パナソニック、東芝)がトップ10に入っていた。
- 米国出願は今やUSPTOのEFS-Webというサイト(http://www.uspto.gov/patents/process/file/efs/)で誰でも可能であり、米国以外からでも。つまり日本からでも自宅のパソコンを使い、PDFファイルで米国特許庁に特許を申請できる。専用のソフトウエアも必要ない。
- Motorola MobilityとAppleの訴訟で、AppleのiPhoneがMotorola Mobilityの特許を侵害していると訴えられ、ITCでAppleは非侵害とされ、連邦巡回控訴裁判所でもこの判断が支持された。
- この訴訟では、"in response to a change in accessibility of an application,"
"to communicate the change in accessibility of an application to the fixed portion of the wireless communication system"のフレーズのうち、"a change"が一つのchangeか1つ以上のchangeかが問題になっている。 - Motorolaのいうchangeとは、push-enabled applicationの削除に関連した変化と、push notificationの削除に関連したアクセス可能性の変化であると裁判所は判断している。
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
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