第128回AppleとMotorola Mobilityの訴訟の続きです
Motorola Mobilityの特許をAppleのiPhoneは侵害していない、との判断が米国で下りました。対象となるのはMotorola, Inc.の6,272,333号特許です。
"A method and apparatus in a wireless communication system for controlling a delivery of data"
「データを配信を制御する、無線通信システムにおける方法及び装置」
この特許のクレーム12をAppleの製品は侵害していないと連邦控訴裁判所で判断されました。ITCで既にAppleの非侵害が判断されており、これに不服のMotorola Mobilityが控訴していたもので、ITCの判断が支持されました。
判決で述べているのは、特にFig. 4の部分です。
FIG. 4 is a flow diagram 400 depicting operation of the subscriber unit 122 for maintaining the application registry in accordance with the present invention.
図4は、本発明によるアプリケーションレジストリを維持するための加入者ユニット122の動作を記述したフロー図400である。
注)アプリケーションレジストリとは、いわばアプリケーションの記憶場所です。
At step 404 the processing system 206 of the subscriber unit 122 registers the applications accessible to the subscriber unit 122, along with the corresponding application version numbers, into the application registry 226.
ステップ404では、加入者ユニット122の処理システム206は、対応するアプリケーションヴァージョンの番号と共に、加入者ユニット122にアクセス可能なアプリケーションをアプリケーションレジストリ226に登録する。
The processing system 206 then monitors the status of the subscriber unit 122 to determine 406 whether a change in the accessibility of an application has occurred, e.g., through the installation of a new application, or through coupling the subscriber unit 122 to a previously uncoupled external device 230, or through uncoupling the subscriber unit 122 from a previously coupled external device 230.
そして処理システム206は、加入者ユニット122の状態を監視し、アプリケーションのアクセス可能性の変更が、新しいアプリケーションのインストール等、あるいは加入者ユニット122を以前の接続されていない外部デバイス230に接続することにより、あるいは以前に接続されていた外部デバイス230から加入者ユニットを切断することにより生じたか否かを判断する。
注)加入者ユニットのアプリケーションに変更が生じたかを処理システムが監視します。
At step 408, if a change in the accessibility of an application has occurred, then the processing system 206 accesses the updater element 228 and updates 410 the application registry 226.
ステップ408では、アプリケーションのアクセス可能性に変更が生じた場合、次に処理システム206はアップデート要素228にアクセスし、アプリケーションレジストリ226を更新する(410)。
The processing system 206 then controls the transmitter 209 to communicate 412 the change to the fixed portion 102, so that the processing system 310 of the controller 112 can update its copy 324 of the application registry corresponding to the subscriber unit 122. Flow then returns to step 404. If, on the other hand, at step 408 no change in the accessibility of an application has occurred, then the flow simply returns to step 404.
次に処理システム206は、送信手段209を制御し、固定部分102に対する変更を通知する(412)。これによりコントローラ112の処理システム310は、加入者ユニット122に対応するアプリケーションレジストリのコピー324を更新することができる。フローはステップ404に戻る。他方、ステップ408でアプリケーションのアクセス可能性に何ら変化が生じなかった場合は、フローは単純にステップ404に戻る。
注)この特許は、加入者ユニットのアプリケーションに変更があったかを監視し、変更あった場合は、変更を通知し、アプリケーションレジストリのコピーを更新する技術のようです。
この訴訟で問題となるのはクレーム12です。
A subscriber unit in a wireless communication system for controlling a delivery of data from a fixed portion of the wireless communication system, the subscriber unit comprising:
a receiver for receiving the data;
a processing system coupled to the receiver for processing the data; and
a transmitter coupled to the processing system for communicating with the fixed portion of the wireless communication system,
wherein the processing system is programmed to:
maintain an application registry comprising a list of all software applications that are currently accessible to the subscriber unit; and
in response to a change in accessibility of an application,
update the application registry; and
control the transmitter to communicate the change to the fixed portion of the wireless communication system.無線通信システムの固定された部分からのデータ伝送を制御する無線通信システムにおける加入者ユニットであって、
注)上記で説明したことがクレームで構成要件として規定されています。加入者ユニットと処理システムは受信手段を介して接続されており、データ処理手段は加入者ユニットのアクセス可能なアプリケーションを記憶したレジストリを有しており、アプリケーションのアクセス可能性の変化に応じてレジストリを更新するというものです。
データを受信する受信手段と、
データを処理する受信手段に接続された処理システムと、
無線通信システムの固定された部分と通信する処理システムに接続された送信手段を備え、
前記処理システムは、
加入者ユニットに現在アクセス可能なすべてのソフトウエアアプリケーションのリストを備えた、アプリケーションレジストリを維持し、
アプリケーションのアクセス可能性の変化に応答して、
アプリケーションレジストリを更新し、
無線通信システムの固定された部分に対し変化を通知するように、送信手段を制御するようにプログラムされている、前記ユニット。
連邦巡回控訴裁判所ウエブサイトに判決が掲載されています(http://www.cafc.uscourts.gov/images/stories/opinions-orders/12-1666.Opinion.1-8-2014.1.PDF)。これを検討すると、"a change in the accessibility"「アクセス可能性の変化」がここで争点になっているようです。Appleは、クレームは「すべての変化」を要件としていると主張するが、Motorolaは「全ての変化」まで要求していないと主張しています。そしてAppleの製品が"in response to a change in accessibility of an application",
"to communicate the change in accessibility of an application to the fixed portion of the wireless communication system"という要件に該当するとMotorolaは主張しました。
次回もこの判決を更に検討したいと思います。
今週のポイント
- Motorola Mobilityの特許をAppleは侵害していない、との判断が米国で下った。
- 対象となるのはMotorola, Inc.の6,272,333号特許である。
"A method and apparatus in a wireless communication system for controlling a delivery of data"
「データを配信を制御する、無線通信システムにおける方法及び装置」 - この特許のクレーム12をAppleは侵害していないと連邦控訴裁判所で判断された。ITCで既にAppleの非侵害が判断されており、これに不服のMotorola Mobilityが控訴していたもので、ITCの判断が支持された。
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
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