第149回Aereoのテレビ配信サービスがアメリカ最高裁で違法に
Aereoのテレビ配信サービスがアメリカの最高裁で著作権侵害と認定されたとのニュースが話題になっています。Aereoは地上波テレビ番組をインターネットで配信するサービスを提供しているようです。最高裁では著作権侵害との判断でした。この判決を受けて配信サービス停止も余儀なくされました。
加入者はAereoからアンテナを割り当てられ、これでテレビ番組を受信してタブレットや携帯などで視聴します。
下級審では著作権侵害ではないとの判断だったので、違法ではないとの考えもあるようです。テレビ番組を受信して複製する、これが"personal copy"であるから、違法ではないとの主張をAereoはしているようです。
加入者が視聴するのを支援しているに過ぎない、と解釈すれば違法ではないという解釈も成り立つのですが、加入料を徴収して大々的に行うと、支援とはいえないと思われます。
最高裁判例では、「Aereoは、番組が放送とほぼ同時に、インターネットを介してテレビ番組を加入者が視聴することを可能にするサービスを販売している。加入者が今放送されている番組を視たいと望む場合は、加入者はAereoのウエブサイトのメニューから番組を選択する」とあります。
判例では"personal copy"という言葉が使われています。加入者にはアンテナが割り当てられ、システムが加入者に配信するデータは、そのpersona copyからデータであり、そのデータは割り当てられたアンテナが受信した放送信号から構成される、一人の加入者のフォルダーに保存されたデータが別の加入者に配信されることはない、もし2人の加入者が同じ番組を視たいときに、システムは2人の別個のアンテナを作動して、2人の別個のフォルダーに2つの別個のコピーを保存する、というのがAereoの主張です。
このようなサービスの支援をAereoが行っているので、fair useの支援ということで違法ではないとの主張でしょうか。確かにfair useの手助けであれば違法ではないとの考えもあるのですが、有料でアンテナを貸し出すという大々的サービスでその言い逃れができないと思います。
アメリカ著作権法(17. U.S. Code)106条では、著作権者の排他権exclusive rightの一つとして、音楽著作権、視聴覚著作物の場合は、
“to perform the copyrighted work publicly"
を定めています。
「公に著作物を上演、演奏すること」です。
最高裁判例では、Aereoのサービスが"perform"と"publicly"に当たるかを検討しています。今後もこの判例を読み進めていきます。このperform(上演、演奏する)やpublicly(公に)の解釈が今回の判断と関わっています。
今週のポイント
- Aereoというテレビ配信サービスの会社がアメリカの最高裁で著作権侵害と認定された。
- 最高裁判例では"personal copy"という言葉が使われている。加入者にはアンテナが割り当てられ、システムが加入者に配信するデータは、そのpersona copyからデータであり、そのデータは割り当てられたアンテナが受信した放送信号から構成される、一人の加入者のフォルダーに保存されたデータが別の加入者に配信されることはない、もし2人の加入者が同じ番組を視たいときに、システムは2人の別個のアンテナを作動して、2人の別個のフォルダーに2つの別個のコピーを保存する、というのがAereoの主張である。
- アメリカ著作権法(17. U.S. Code)106条では、著作権者の排他権exclusive rightの一つとして、音楽著作権、視聴覚著作物の場合は、“to perform the copyrighted work publicly"(公に著作物を上演、演奏すること)と定めている。
- 最高裁判例では、「Aereoは、番組が放送とほぼ同時に、インターネットを介してテレビ番組を加入者が視聴することを可能にするサービスを販売している。加入者が今放送されている番組を視たいと望む場合は、加入者はAereoのウエブサイトのメニューから番組を選択する」とある。
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
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