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翻訳コラム

COLUMN

第158回Appleのガラス張り建物のデザイン特許

2014.09.04
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子

Appleのガラス張りデザインの権利取得が活発です。アメリカでSteve Jobs氏が発明者の一人となっているデザイン特許が登録されました。以下のニュース記事をご覧下さい。
WIREDの「今は亡きスティーブ・ジョブズの新たな特許:「アップルストアのデザイン」(http://wired.jp/2014/09/02/nyc-apple-store-design/)

8月26日に取得されたデザイン特許712,067号であり、アメリカ特許公報もご覧下さい。

アップルストアのガラス構造が特許されている(米国特許7,165,362号)のは前にもこのブログで話しましたが、店舗のデザインやレイアウトの商標登録もされています(米国商標登録4,277,914号)。
そして今度はデザイン特許です。確かにこのようなガラス構造の建物は実用特許、意匠特許、商標のいずれの権利をとってもよいし、またあらゆる権利で保護されるべきです。
店舗の内装、外観は日本では保護しがたい部分です。意匠でもないし、商標でもない、ちょうどすきまの部分です。したがって不正競争防止法での保護に頼るしかありません。しかしこの法律では権利として登録することはできません。
日本の意匠では厳格な物品性という要件があります。つまり物品に付けられた形状、模様、色彩であることが必要です。
しかしアメリカのデザイン特許では今回のガラス張りビルのように、厳格な物品を要求していません。創作を大切にする国の気質を感じます。
商標についても同様です。店舗の内装、レイアウト、配置が商標できるとは日本では考えられないことです。立体商標が登録できるといっても、きっちりとした形状が必要です。早稲田大学は大隈重信像の立体商標を登録し(日本国商標登録4164983号)、校舎の写真を複数枚撮影して平面商標として登録しています(日本国商標登録4208152号ほか)が、本当は校舎の立体商標を登録したいところでしょう。確かに校舎を見ただけで早稲田大学の識別標識になるのであれば、登録してもよいと思うのですが。
しかし今回のAppleのガラス張り建物のデザイン特許のような件が今後も増えると、建物の外観や内装にも知的所有権が認められ、知財の概念もどんどん広がっていくことになるでしょう。確かに人間の知的創作を保護するのが知的所有権ですから、物品とか有体物に限定するのはおかしい気がします。無体財産は何に化体していてもよいのではないでしょうか。建物、校舎、内装、レイアウトなどあらゆるものに化体するのが無体財産ではないでしょうか。

今週のポイント

  • Appleのガラス張りデザインの権利取得が活発である。アメリカでSteve Jobs氏が発明者の一人となっているデザイン特許が登録された。8月26日に取得されたデザイン特許712,067号である。
  • アップルストアのガラス構造が特許され(米国特許7,165,362号)、店舗のデザインやレイアウトの商標登録もされている(米国商標登録4,277,914号)。

奥田百子

東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)

著書

  • もう知らないではすまされない著作権
  • ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
  • 特許翻訳のテクニック
  • なるほど図解著作権法のしくみ
  • 国際特許出願マニュアル
  • なるほど図解商標法のしくみ
  • なるほど図解特許法のしくみ
  • こんなにおもしろい弁理士の仕事
  • だれでも弁理士になれる本
  • 改正・米国特許法のポイント