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翻訳コラム

COLUMN

第159回GoogleとASMPというアメリカの写真家の団体と和解

2014.09.11
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子

GoogleとASMPというアメリカの写真家の団体が著作権訴訟と和解しました。このニュースは以下をご参照ください。
ITmediaニュース
「Google Booksの著作権をめぐる写真家協会との裁判で和解成立」
(http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1409/08/news048.html)

Google Booksでは書籍の一部をスキャンして公開しています。しかし書籍には写真が掲載されています。これが著作権で問題あるので、ASMPらがGoogleを提訴していました。Google Booksの話はこれまで何度もしてきました。
米国の作家の団体であるAuthors Guildからも、著作権侵害として訴えられていました。Googleが米国や欧州の大学の図書館と協力して書籍の電子化を行うプロジェクトに作家団体や出版協会は不満あり、これらの団体からも提訴されていました。書籍には写真も載っているので、写真の方でも訴訟もあったのですね。

他社のウエブサイトを掲載するときに、文章だけでなく写真や図、絵の著作権も考える必要があります。たとえばアメリカ特許庁のウエブサイトの画面をキャプチャリングして本に掲載する、というときに文章に関してアメリカ特許庁の承諾は必要でしょうか。
これはUSPTOウエブサイトのCopyright Informationに記載されています(http://www.uspto.gov/termsofuse.jsp)。
アメリカ特許庁のウエブサイトはUS Government に著作権が属し、US Governmentの作成したものはpublic domain(公有)ということです。つまり自由に使っても良いということです。しかしすべてが公有ではなく、写真や絵、図は個々にそのソースに問い合わせて許諾が必要とのことです。たとえば写真が掲載されていれば、それこそ個々の写真家や写真家協会などの許諾が必要です。
つまりウエブサイトも本も文章や絵、図、写真の組み合わさった著作物です。全員の著作権者に挨拶が必要です。図や写真、絵には著作権表示がされているはずです。
しかし政府が持つ著作物についてはアメリカ特許庁ウエブサイトでも見たようにpublic domainです。アメリカ著作権法105条という条文がこのウエブサイトに出てきましたので、調べてみました。

US Copyright Law 105条

Copyright protection under this title is not available for any work of the United States Government, but the United States Government is not precluded from receiving and holding copyrights transferred to it by assignment, bequest, or otherwise.

翻訳

本法による著作権保護は、アメリカ政府のいずれの著作物についても得られない。しかしアメリカ政府が譲渡、遺贈、その他により移転されて著作権を受け取り、保有することは妨げられない。

との条文があるのですね。しかしこれはアメリカ特許庁のウエブサイトだからこういう結論なのですが、普通の会社のウエブサイトだったらどうでしょう。
リンクを張るのは?
リンクを張るのと本に掲載するのでは異なります。リンクは認められますが、本に掲載するのは引用として認められるでしょうか?要件を満たしてれば引用になることもあります。

今週のポイント

  • Google BooksについてASMPというアメリカの写真家の団体等から著作権侵害で提訴され、和解した。Google Booksでは書籍の一部をスキャンして公開している。書籍には写真が掲載されており、これが著作権で問題あるので、ASMPらがGoogleを提訴していた。
  • Google Booksに関しては、米国の作家の団体であるAuthors Guildや出版社の団体からも著作権侵害として訴えられていた。

奥田百子

東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)

著書

  • もう知らないではすまされない著作権
  • ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
  • 特許翻訳のテクニック
  • なるほど図解著作権法のしくみ
  • 国際特許出願マニュアル
  • なるほど図解商標法のしくみ
  • なるほど図解特許法のしくみ
  • こんなにおもしろい弁理士の仕事
  • だれでも弁理士になれる本
  • 改正・米国特許法のポイント