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翻訳コラム

COLUMN

第169回Appleが28億円以上の支払いを命じられる

2014.11.20
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子

Appleが特許侵害訴訟で負けて2,360万ドル(約28億円)も支払うべきとの判決がアメリカ連邦地裁で下りました。あのAppleが侵害で訴えられるとは?
Gigazineの 以下の記事を参照して下さい。

「Appleがポケベルの特許を侵害したとして27億円以上を支払うことに」
(http://gigazine.net/news/20141119-apple-pay-patent/)

ポケベルの特許ということで、以下の特許を読むとmobile unitが出てくるので、これを指していると思われます。6つの特許が対象になっています。その一つのUS 5809428号の要約を訳しました。メッセージを送り、acknowledgementの通知がなかったら、再度通知を送り、この時点でも通知なければ将来メッセージを送る、というよく使われる技術です。クレーム1もこれが手段の形で書かれています。

Abstract

“A network operations center transmits a data message to a wireless mobile unit and waits for a data acknowledgment message. If no acknowledgment is received within a specified time, the network operations center sends a probe message to attempt to locate the mobile unit and waits for a probe acknowledgment message. If still no acknowledgment, the network operations center marks the data message as undelivered and stores it for future delivery. If a mobile unit receives a probe message while its transmitter is powered off, it displays an indication to the subscriber that there is a message waiting to be delivered. The subscriber can then dial into the network operations center to retrieve the message. Or, when the transmitter of the mobile unit is powered back on, the mobile unit sends a registration message to the network operations center; and upon receiving the registration message, the network operations center automatically re-transmits the undelivered data message to the mobile unit".

翻訳

「ネットワーク・オペレーション・センターは、無線モバイルユニットにデータメッセージを送信し、データ承認メッセージを待つ。所定時間内に承認が受信されない場合は、ネットワーク・オペレーション・センターは、プローブメッセージを送り、モバイルユニットの位置を突き止めることを試み、プローブ承認メッセージを待つ。承認がまだない場合は、ネットワーク・オペレーション・センターは、データメッセージを配信されていないものとしてマークし、今後配信するために記憶する。送信機の電源が切れている間、モバイルユニットがプローブメッセージを受信する場合は、ディスプレイは、配信待ちのメッセージがあるという表示を加入者に表示する。そして加入者はネットワーク・オペレーション・センターにダイアルし、メッセージを検索する。あるいはモバイルユニットの送信機が再びオンになった場合は、モバイルユニットは登録メッセージをネットワーク・オペレーション・センターに送信し、登録メッセージを受信すると、ネットワーク・オペレーション・センターは自動的に配信されていないメッセージをモバイルユニットに再送信する。」

あとの5件は"two-way communication system"とか「複数の送信機の通信」などが書かれています。
 Sky Tel pagingという技術であり、これを持っているのがMobile Telecommunication Technology他です。こういった基本的な技術を利用するのは仕方ないのですが、許諾を得れば良かったということです。しかしAppleとしては不意打ちをくらったという面が強いでしょう。
iPhoneやiPad, iPod Touchなどが侵害しているといわれたのですが、ラバーバンド特許をサムスンが侵害しているとAppleが主張したことを思い出すと、皮肉な結果です。誰しもが当たり前に使っている基本的な技術でも特許が取られている、これを忘れると不意打ちとなります。
特許紛争では企業の規模に関係なく勝敗が決まります。中堅企業でもすごい技術を持っているからです。

今週のポイント

  • Appleがモバイルユニットの特許侵害として、28億円以上もの損害賠償を命じられた。
  • 6件の特許が対象になっているが、その一つのUS 5809428号は、メッセージを送り、acknowledgementの通知がなかったら、再度通知を送り、この時点でも通知なければ将来メッセージを送る、というよく使われる技術である。

奥田百子

東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)

著書

  • もう知らないではすまされない著作権
  • ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
  • 特許翻訳のテクニック
  • なるほど図解著作権法のしくみ
  • 国際特許出願マニュアル
  • なるほど図解商標法のしくみ
  • なるほど図解特許法のしくみ
  • こんなにおもしろい弁理士の仕事
  • だれでも弁理士になれる本
  • 改正・米国特許法のポイント