第224回区別
以前にもチラっと触れたことがありますが、フランス語ではチョウチョとガをどちらもパピヨン(papillon)というそうですね。
日本人は、昼間に活動しているのを「チョウチョ」、夜に活動しているのを「ガ」というふうに区別しています。区別するために別の名前を用意しているわけですね。
つまり、日本人はチョウチョとガは別物と考えているわけです。
あるモノをどういう名前で呼んでいるかで、その言語では何と何を区別し、何と何を同類とみなしているかが分かってきて、なかなか面白いですね。
たとえば日本語で「時計」と呼ばれるモノ、中国語ではどうなるでしょうか。
腕時計のような小さなものは
表
biăo
置時計や掛け時計のような大きめの時計なら
钟
zhōng
大きさによって言い方が別になるのですね〜。
大きさで言い方が変わるものは、他にも「箱」などがありますね。以前本ブログでも紹介してことがあると思います。
箱子
xiāng zi
と言えば大き目の箱です。
盒子
hé zi
と言えば小さめの箱です。
他に、親族名称などは中国語では非常に細かく言い分けられていますね。たとえば祖父母なんかは、中国語では父方か母方で言い方が違うので、日→中訳の時に困ることがあります。
「●●ちゃんは両親が亡くなったのでおじいさんの家で暮らしています」という文を中国語に訳そうとしても、「おじいさん」が父方なのか母方なのか分からないと非常に困ります。
中国語では、父方の祖父を「祖父 zŭ fù」「爷爷 yé ye」、母方の祖父を「外祖父 wài zŭ fù」「老爷 lăo ye」と呼び変えています。大雑把に「おじいさん」というのは難しいのです。
先日、中国語入門クラスの授業で人称代名詞の勉強をしました。
みなさんもご存知の通り、中国語の3人称の代名詞は、3種類あります。
人間で男性なら
他
人間で女性なら
她
人間以外なら
它
ただ、このように字は書き分けるのですが、発音はすべて同じ「tā」です。
つまり、会話している分には、指しているものが人間なのかどうか、男なのか女なのか、分からないのですね。
そういうことを生徒さんに話していると、ある生徒さんが「音声で区別がないなら、中国の人は会話している時にどういうふうに、男なのか女なのか、人間なのかそれ以外なのかを区別するのですか?」と尋ねてきました。
区別のある世界に住んでいる人はそれが気になるところですよね。でも、区別のない世界に飛び込んでしまえば気にならないものです。
だって、反対に、我々はおじいさん・おばあさんを、父方か母方か区別しないでもそんなに不便なく暮らせているでしょう?それと同じことです。
最初は戸惑うかもしれませんが、慣れると、それはそれで便利なものだな〜と思えて、気楽になると思いますよ〜。
伊藤祥雄
1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了
通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当
著書
- 文法から学べる中国語
- 中国語!聞き取り・書き取りドリル
- CD付き 文法から学べる中国語ドリル
- 中国語検定対策4級問題集
- 中国語検定対策3級問題集
- ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本