第226回部首の話
その昔、そう、僕がまだ大学生だった頃ですから、20数年前ですね。大学から帰る電車が、とある関西有名私大の最寄り駅を通りかかった時、ドチャっと若者が乗ってきたのです。どうやらその日、入試だったようで、入試を受けた18〜9の兄ちゃん姉ちゃんが乗ってきたのですね。
僕は座席に座っていたのですが、たまたま僕の目の前に立った受験生君。どうやらお姉さんが迎えに来ていたようで、受験プレッシャーからの解放感からテンション上がりまくり、お姉さんとその日の出題について話していました。
弟君「いや〜、国語完璧やったで〜。ここの大学って、毎年漢字の問題が出るんやけどな、完璧に書けたで!」
姉君「そうなん?そらよかったな〜。」
弟君「『エンダンに花を添える』の『エンダン』、騙されへんもんね。ちゃんとニスイで書いたもん。」
姉君「え?サンズイやろ?」
弟君「違うよ〜。あの字は水と全く関係ないやんか。サンズイは水と関係のある字につくねんで〜」
姉君「え〜っと。そうやったかなぁ(苦笑)」
目の前で聞かされるコッチは、もう笑いたくて、でも笑えなくて、苦しい思いをした10数分でした(笑)。
ねえ、受験生君。「ニスイ」も「サンズイ」も、どちらも水と関係があるんだよ〜。それに、答えは「演壇」つまり、「サンズイ」なのに〜。お姉さんも受験生君が落ち込んではいけないと思ってはっきり否定はできなかったようで、大変そうでした〜(笑)。
でも、難しいですよね、ニスイなのか、サンズイなのか。
小学校で漢字を習った時、結構先生に筆順やら部首やら、うるさく注意を受けましたよね。でも中国語を勉強し始めてから、漢字のふるさとたる中国では違う筆順だったり、トメやハネが違っていたり、いろいろ不思議なことがあります。今日はその中から部首について見てみたいと思います。
上記の「演」という字、これは中国の簡体字でも同じで、サンズイです。しかし、次の字は、なぜか中国語の簡体字では、ニスイになるのです。
以下、( )内の文字は簡体字です。
- 決(决) jué
- 沖(冲) chōng
- 況(况) kuàng
- 減(减) jiăn
- 浄(净) jìng
- 涼(凉) liáng
何か理由があるのかなと思いましたが、特に何か法則性を感じることはありませんね〜。どなたかご存知の(もしくは思いついた)方がいらっしゃいましたら、僕にも教えてくださいね。
ちなみにニスイのことは中国語では
两点(儿)水
liăng diăn(r) shuĭ
サンズイは
三点(儿)水
sān diăn(r) shuĭ
と言います。
さて、他に、モンガマエ。「門」という部首ですね。この中国語(簡体字)での略し方はご存知でしょうか。そう、「门」ですよね。
ほとんどすべてのモンガマエの字は同じように略して書きます。たとえば「間(间)」「問(问)」「聞(闻)」など。しかし、実は2つほど例外があります。「開」と「関」です。
この2つだけは、モンガマエを取っ払って、それぞれ「开 kāi」「关 guān」と書きます。。
これもまた不思議ですね。この2つだけ、どうしてモンガマエを無くしてしまうのか。。。まぁ、よく使う字だから、より簡単にしようということかな〜?と思っていますが(笑)、はたしてどうなのでしょうね。
ちなみにモンガマエは中国語では
门字部
mén zì bù
と言います。
部首の名前も覚えておくと、自分の名前の漢字を説明するのに役立ちますよね。余裕のある時に覚えておくといいかもしれません。いつか本ブログでも取り上げてみようと思います。
伊藤祥雄
1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了
通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当
著書
- 文法から学べる中国語
- 中国語!聞き取り・書き取りドリル
- CD付き 文法から学べる中国語ドリル
- 中国語検定対策4級問題集
- 中国語検定対策3級問題集
- ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本