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翻訳コラム

COLUMN

第274回机の話

2016.02.17
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

日本で中国語を勉強する人は、多くの場合中華人民共和国の標準語である「普通话 pŭ tōng huà」という言葉を習いますね。もちろんこれを習っておけば、中国全土でほぼ通じますし、台湾でも世界の華僑社会でもほぼ通じます。

そしてこの「普通话」を習う際に使われる文字は、中華人民共和国で使われている「简体字 jiăn tĭ zì」という文字です。皆さんも、好きと嫌いにかかわらず、日本で中国語を習う以上、この「简体字」と嫌でも付き合わなければなりません(笑)。

「简体字」(以下「簡体字」とします)は簡略化された漢字ですね。中には「もっと簡略化してよ〜」と思いたくなるような字も結構残っているのですが(例えば「赢 yíng (勝つ)」笑)、見ていると色々面白いことに気づいたりもします。

この字はご存知でしょうか?そう、数字を尋ねる疑問詞でしたね。例えば:

几个?
jĭ ge
何個?

この「几」という字、日本の漢字ではどの字に相当するか、ご存知ですか?

そう、「幾」ですね!

この「幾」という字なら、日本語でも数量を尋ねる疑問詞「幾つ、幾ら」ですから、納得ですよね(笑)。

そしてこの「幾」という字が使われている別の漢字でも、簡体字では「幾」の部分を「几」というふうに表記しています。つまり:

  • 「磯」という字は、簡体字では「矶」
  • 「機」という字は、簡体字では「机」

そう、「機」は、簡体字だと「つくえ」になってしまうのですね!(笑)

飛行機のことを中国語では「飞机 fēi jī」と言います。「どうして飛ぶつくえなんて言うんだろう」と不思議に思っている人もいるのではないでしょうか?

実は、この「机」という字は「機」という字のことだったのですね。それなら飛行機が「飛ぶつくえ」になっていても、納得ですよね(笑)。

「権」「歓」「勧」といった漢字の共通部分、簡体字では「又」になります。つまり:

  • 「権」という字は、簡体字では「权」
  • 「歓」という字は、簡体字では「欢」
  • 「勧」という字は、簡体字では「劝」

ところが、逆は真ならず。簡体字で「又」となっているものの全てが日本の漢字では「権」「歓」「勧」などの共通部分になるかというと、そうではありません。

実は、「漢」「嘆」「難」に共通の部分も、簡体字では「又」になります。

  • 「漢」という字は、簡体字では「汉」
  • 「嘆」という字は、簡体字では「叹」
  • 「難」という字は、簡体字では「难」

そして、法則性がないらしいものも色々あります(笑)。

「僅」という字は、簡体字では「仅」
でも、「勤」という字は、簡体字でも「勤」
(「勤」を「又」+「力」と書くと上で紹介した「劝(勧)」という字になってしまいます)

他にも、「対」という字は、簡体字では「对」
「鳳」という字は、簡体字では、「凤」というふうに、中身が「又」なっています。

他にも色々ありそうですね。あまりうまく整理できない状況なので残念ですが、簡体字を覚える時の手がかりくらいにはなりませんかねー?(笑)

簡体字を見ていると、色々気づくことがあって楽しいです。何かあれば、またご紹介しますね。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本