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翻訳コラム

COLUMN

第287回也と都

2016.05.18
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

「何でもある」「何もない」といった言い方、中国語もそっくりな言い方になるのが面白いですね。

什么都有。
shén me dōu yŏu
何でもある。

什么也没有。
shén me yě méi yŏu
何にもない。

このような「疑問詞+也/都〜」のように、「也」と「都」がよく似た使われ方をする表現、色々ありますよね。

最初にこのような言い方を習った時、日本語でも「何でもある」「誰もいない」「誰でも知っている」という時に「も」を伴うので、中国語でも「も」に当たる「也」を使えばいいや(「都」を使わなくてもいいや)、そのほうが覚えやすいもんね、なんて思っていました(笑)。

でも、中国人たちの話や文章を見るに、どうも「也」よりも「都」のほうが多いような気がしていました。そしていつしか伊藤も「都」のほうを多用するようになっていきました。

テキストや辞書なんかだと、「也」と「都」の使い分けなどについてはあまり詳しく説明してくれておらず、どうしたものかと思っていたのです。

そんな時、あるテキストの講師用解説本を見るでもなしに見ていると、そこにあっさりと説明があったのです。え?知らなかったのって僕だけ?(苦笑)

そのテキストによると、基本的には「都」を使うのですが、後半部分(「也」や「都」よりも後ろの部分)が否定形の場合は「也」も使われます、というようなことでした。

そう言われてみて、色々考えると、確かにそうかもしれないと思い当たりました。いやー、中国語を勉強し始めて30年近くになろうとしていますが、今頃知る事実も多く、本当に語学って奥が深いですねぇ。

で、僕は更に他の「也」「都」についても考えてみました。例えば「一つもない」とかの言い方だとどうかなと。

一点儿也没有。
yì diănr yě méi yŏu
少しもない。

一个都不能少。
yí ge dōu bù néng shăo
一つも欠かせない。

あ、これは後半部分が必ず否定形になるから、「也」でも「都」でもいいんでしたっけね(笑)。

では、「连〜也/都…(〜でさえ…)」だとどうでしょうか。

いくつかの辞書の例文を見たところ、やはり「也」を使っている例文はほとんど、後半部分が否定形でした。

连他都知道。
lián tā dōu zhī dào
彼でさえ知っている。

连我也不认识。
lián wŏ yě bú rèn shi
私ですら(その人を)知らない。

ただ、例外もあったので絶対的な規則ではなく、あくまで「そういう傾向にある」程度でしかありませんがね。

でも、今まで僕は漠然と「どっちがいいのかなぁ」と思いながら、なんとなく中国人の口からは「都」がよく聞こえて来るので自分も「都」を使うことが多かったのですが、これからは自信を持って「也」も使えそうです(笑)。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本