第309回どっちでもいいの?
2文字の単語で、文字を前後入れ替えても同じ意味になる言葉、中国語にはチラホラあります。
不思議ですね。日本語にはそういう単語はあまりないと思います。でも中国語にはいくつか見受けられます。例えば:
相互
xiāng hù
互相
hù xiāng
いずれも「互いに」「相互に」という意味です。僕の勝手な印象だと最近は「相互」のほうが多く目にし耳にするような気がしますが、僕は「互相」の方に先に出会ったので、今でも頭にすぐ浮かぶのは「互相」です(笑)。
灵魂
líng hún
魂灵
hún líng
いずれも「霊魂、魂、精神」のような意味で使われる言葉ですよね。とある辞書では同じ意味と書かれていました。個人的な印象では「灵魂」のほうが多い気がしています。
このように同じ意味になるものもありますが、地域差があるものもあって、面白いです。
例えば:
地道
dì dao
道地
dào dì
これは「本場の、生粋の」というような意味の単語ですが、どうやら後者は台湾で使われる言い方らしいです。
大陸でも「道地」を使う地域があるかもしれませんが、僕は「地道」しか聞いたことがありません。でも台湾の人に「地道」というと結構笑われたりします(笑)。面白いですよねぇ。なぜこうなったのかなぁ。
大陸と台湾で字が逆に並んでいるものとして、他には「パンダ」があります。
大陸のほうではパンダのことはこう言いますよね?
熊猫
xióng māo
これ、台湾でも通じるのですが、台湾ではこういう言い方もあるそうです。
猫熊
māo xióng
この「猫熊」は大陸では僕は聞いたことがありません。手元の辞書にはどちらも出てきますけど、多分「猫熊」は台湾の言い方だと思います。
このことについて、台北市立動物園のパンダ館の中に説明を書いた看板がありました。本当かどうか分かりませんが、面白かったのでご紹介します。
この説明によると、本来は「猫熊」が妥当であるとのこと。なぜなら、中国語では前のものが後のものを修飾し、後ろのものが中心語となる、という言語習慣がありますので、「猫みたいな熊」という意味の「猫熊」のほうが妥当だというのです。
確かにパンダは、見た目は熊に近いですものね。「熊みたいな猫」というより「猫みたいな熊」のほうが妥当だと言われれば、反論はできません(笑)。
そして、中国語では昔縦書きが基本でしたが、横書きする時には右から左へと書かれていました(日本語もそうでしたよね)。
ですから「猫熊」も、右から左に「熊猫」と書かれていたのですが、その後横書きは左から右に書かれるようになって、混乱してしまったのだ、というのです。
なるほど、これを信じるなら「猫熊」のほうが正統だということになりますねぇ(笑)。
といっても、もう僕は「熊猫」で頭に定着してしまっているし、大陸では「熊猫」のほうが優勢なので、今更僕の頭の中の単語帳を「猫熊」に更新する気はありませんけど(笑)。
でも、僕の中の謎が1つ解けて、嬉しかったです。
伊藤祥雄
1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了
通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当
著書
- 文法から学べる中国語
- 中国語!聞き取り・書き取りドリル
- CD付き 文法から学べる中国語ドリル
- 中国語検定対策4級問題集
- 中国語検定対策3級問題集
- ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本