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翻訳コラム

COLUMN

第316回辞書

2016.12.14
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

皆さん、辞書は丹念に調べていますか?

辞書は外国語を勉強する上で必要不可欠のツールです。これがないと懐中電灯も無しに闇夜を歩くようなものです(笑)。

最近大学でも中国語を教えさせていただいたりしているのですが、みんな辞書って買わないんですねぇ。僕はドイツ語始めた時もフランス語始めた時も韓国語始めた時も、わりと早い時期に辞書を買ったものです。今やいずれも本棚の飾りになってはおりますがね(苦笑)。

でもまぁ、辞書を買うと「頑張るぞ」という気にもなるので、やっぱり買うべきです。特に電子辞書ではなく紙の辞書がオススメです。

電子辞書はとても便利です。持ち運び安いですし、調べるのも一発で出てきますから面倒がありません。でも入門〜初級レベルだと、そんな効率性より大事なものがあるだろうと、頑固じじいの僕なんかは思うわけであります(笑)。

たとえば、中国語の単語を調べるためには、まず漢字の発音を調べなければなりません。僕は入門期のころ、小さいサイズの『新华字典』を使ってまず発音を調べ、それから中日辞典で単語の意味を調べる、というふうにしていましたが、漢字の発音や単語の意味を調べる過程において、目当ての字や単語に行き当たるまでにいろいろな字や単語に出会いました。

確かに、授業の予習をしている時なんかだと、目当ての字や単語にすぐに行きつかなければ時間がどんどん無駄に過ぎて行ってしまってイライラしますが、その一見無駄に思える時間が実はとても大事なのですね。いろいろな字の発音や基本の意味などが否応なく目に入ります。気になった字や単語があればつい道草してその項目をじっくり読んでしまったりします。そういうのが後々生きてきたり、直接役立たなくても中国語の知識の幅となってくるのだと僕は信じています。

といっても電子辞書は確かに便利です。僕も愛用しています(笑)。ただ、入門〜初級レベルのころは道草食ったりしながらいろいろな知識を仕入れて行ってほしいなと思うわけです。

ところが最近は電子辞書すら買わないで、スマホの無料アプリとか安いアプリの中国語辞書を使っている学生を見かけます。僕はよく知らないので、やみくもに批判もできないのですが、学生たちの予習の様子を見る限り、無料アプリの辞書(?)はひどいものですねぇ。もしかしたら学生の調べ方が悪いのかもしれませんが、ものすごくトンチンカンなことを言ったりする学生が散見されるので、やはり辞書にはある程度お金をかけるべきだなぁと痛感します。

翻訳をやっている時などは、辞書はすぐ古くなるからな〜と思って、実はあまり辞書を引かずにインターネットに頼る癖がついてしまっている伊藤ですが、日常的に使うほとんどの語彙は、はやり・すたれにほぼ影響を受けないので、辞書を引くという行為は重要ですね!

僕も今後は、暇なときに辞書を眺める、ということを実行したいと思います。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本