第339回こじつけ
僕は大学に入ってから中国語を勉強し始めました。18歳くらいですね。
まだ若くて頭の柔らかい時期ですから、今と比べると、ものを覚えるのがずっと速かったなぁと思いますね(笑)。
それでも、18〜9歳というともう大人ですから、子供が外国語を吸収していくようにはいきません。実践練習を通して場数を踏むことももちろん大切ですが、発音のメカニズムをそれなりに考え練習し、文法も習って論理的に考えながら中国語を読み書き、聞き話すことも必要になってきます。皆さんもそうしていらっしゃるだろうと思いますが、いかがですか?
大人になってからの語学学習は、どうしても「考えながら覚える」ということが必要になってくると思います。この文法現象はどう理解すればいいのかな?と考えながら覚えていくことになるのですね。まぁ多くの場合はテキストや文法書等にその答えが見つかるかと思いますが、細かい問題だと文法書をどう探しても見当たらない、もしくはどこにも書いていない、ということもあると思います。そんな時は、自分なりに考えてこじつけるのがいいと思っています(笑)。
自分なりに考えたら、絶対忘れませんしね〜。ただ、素人考えでしかありませんから、間違っていることが分かったらすぐ修正しなければなりませんけどね。
僕も中国語を勉強し始めてこれまで、数々のこじつけをしてきました。もう身にしみついてしまっていて、どんなふうにこじつけたか忘れてしまったものがほとんどですがね(笑)。
実は、先日久しぶりに「こじつけ」をしました。
ある文法学者さんのブログでこんな文が紹介されていまして、文法学者さんご自身はその文の意味は分かったが、消化しきれていないので、学生から質問が来たらうまく答えられないだろうとおっしゃっていました。その文とは、こんな文です。
你肚子疼不疼了?
nĭ dù zi téng bu téng le
僕もこの文を見た時、どういう意味が分かりませんでした。最後の「了」がなければ普通の反復疑問文ですよね?「あなたはお腹が痛いですか?」という意味です。
しかし「了」がつくとどういう意味でしょうか。本当に最初は全く意味が分かりませんでした。
ブログの説明によると、これは変化を尋ねているのだそうです。つまりこんな意味だそうです。
あなたはお腹がまだ痛いですか?
つまり、過去のある時点で「あなた」が「お腹が痛い」ということが前提として存在し、その状況が今はどうなったか、まだ痛いのかどうかを尋ねる文だということでした。
う〜ん、不思議(笑)。その説明を聞いても、自分の中にしっくり入ってきませんでした(笑)。
仕方がないから、色々考えて、こじつけてみることにしました。
反復疑問文は、動詞や形容詞の肯定形と否定形をくっつけています。例えば普通の反復疑問文で「あなたはお腹が痛いですか?」なら
你肚子疼不疼?
となりますが、これはつまり、「疼(痛い)」なのか「不疼(痛くない)」なのか?と選択肢を相手に与えているのですよね。
では、元の文「疼不疼了?」は、もしかしたらこうかな?
你肚子(还)疼吗?还是不疼了?
(あなたはお腹が(まだ)痛いですか?それとも痛くなくなりましたか?)
つまり、相手に「疼(痛い)」なのか「不疼了(痛くなくなった)」なのかという選択肢を提示しているのかな?
文末に着く「了」は変化を表しますから、「不疼了」は「痛くなくなった」という意味です。だから、この「你肚子疼不疼了?」の「了」は文全体についているのではなく、「不疼」だけにくっついているのかなと。
学問的に見てどうかはわかりません。でも我々のように学者でない人は、こじつけでも自分の中にしっくり入ってくる理由づけができればそれでいい、と僕は思っています。
皆さんもどんどん自分なりにこじつけて、楽しく勉強してくださいね!
伊藤祥雄
1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了
通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当
著書
- 文法から学べる中国語
- 中国語!聞き取り・書き取りドリル
- CD付き 文法から学べる中国語ドリル
- 中国語検定対策4級問題集
- 中国語検定対策3級問題集
- ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本