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翻訳コラム

COLUMN

第353回どう違うのか

2017.09.27
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

今日もちょっと小さい話で恐縮ですが、久しぶりに漢字の話でもしようと思います。

ご存知の通り、中華人民共和国では簡体字という漢字を使います。

漢字は複雑ですからね。少しでも簡略化した方が覚えやすいだろうということで作成されたようですね。まぁ多くは日本の漢字と同じ字体ですし、少し違っても大体わかる物も多いですから、我々日本語ネイティブはそんなに恐れる必要はありません。

しかし恐れなさ過ぎて平気で日本語と同じ字体で書いているものを生徒さんから提出されると、もうちょっと簡体字にも興味持ってよく観察しようよ〜と思ってしまいます(笑)。

今日はちょっと気をつけた方がいいなと思うものを2種類ほどご紹介したいと思います。

点があったりなかったり

「少」「抄」「炒」「歩」「劣」「頻」「省」…

これらの漢字には、全て「少」という字が含まれていますね。

しかし、実は、簡体字で書いた場合、「少」の右側の点の部分が消えて無くなってしまっているものがあるのです。気付いていますか?どの字では点が無くなっているでしょうか?

そう、実は「歩」と「頻」です。ちょっと簡体字で書いてみますね。





日本語の漢字では「少」の部分は左右両方に点がありますよね。でも「歩」と「頻」の場合、簡体字では点は左側だけなのですね〜。

僕も結構長いこと気付かないでいたのですが、ある時気付きまして、その後は漢字の一部に「少」という形が入っている漢字が苦手になりました。全て右側の点を無くしてしまえばいいのなら、それはそれで一貫性があって覚えやすいと思います。でも「劣」は点が両方あり、「歩」は片方無いなんて、そんな〜と途方に暮れたものです(笑)。

その後、よく見ると実は「歩」という字の時だけ右側の点を省くのだということが分かりました。

この「歩」という字の下半分は、形は「少」という形をしていますが、成り立ちとしては「少」という字とは全く関係ないようです。なんでも、左右の足跡の形を組み合わせて作った字らしいです。どこがどう足跡の形なのかよくわかりませんが(笑)、少なくとも下半分の「少」はたまたま「少」という字と同じ形になっただけで、出自は「少」という字ではないのですね。

それに比べて他の字は全て出自が「少」です。その場合は左右両方にキチンと点を書くのですね〜。なるほど、そうやって考えると覚えやすいかもしれません。

点が線に?

「煎」「焦」「烈」「烹」「魚」「熱」「魯」…

これらの漢字には点が4つ横並びになっている部分がありますよね?

しかし、簡体字で書くと点が4つ並んでいる部分が横線1本になってしまっているものがあります。分かりますか?

そう、「魚」と「魯」ですね。簡体字で書いてみますね。





しかし他の字の場合だと、横1本線にしてしまわずにしっかり点を4つ書きます。これはなぜ?

実は「魚」と「魯」以外の字の点4つ部分は「れんが」とか「れっか」と言われる部首で、「火」を表します。しかし「魚」の点4つ部分は部首ではなく、「魚」という字で1つの単位を構成しています。これは魚の形を描いた象形文字なのです。

つまり「魚」の中の点4つは画数を少しでも減らすために横1本線にしてしまうのですが、他の字の「れんが」という部首の場合はちゃんと火の意味を表す点々を保っておこう、という魂胆のようですね(笑)。

「魚」も「少」も、区別に気づいてからは間違えなくなりましたが、それまではしょっちゅう辞書を見たりして確認していました。こういうややこしいことは、できればしないでほしいですが(笑)、まぁ一応意味のある区別だったのです。漢字の成り立ちを考えての区別だったとは、いささかびっくりですね(笑)。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本