第360回上海雑感
わたくし、伊藤祥雄は、中国語を使って飯を食っているのですが、にもかかわらず仕事で中国や台湾に行くことが滅多にありません。
だから、例えば社会人の生徒さんに中国語をお教えしていると、生徒さんのほうが中国の最新情報や現地の状況に詳しいということがたびたび起こります。皆さん出張でしょっちゅう中国や台湾に行っておられるもので。。。(笑)
ある程度仕方ないとは思っているのですが、でも中国語講師として皆さんの前に立つ以上、現地情報にあまりにも疎いというのも、どうかと思いますよね〜。
というわけで、年に1〜2回は中国や台湾に行こうと思っています。
このところLCCのおかげで台湾にはとても安く行けるので台湾に行くことが多かったのですが、先日久々に大陸のほうに行ってきました。時間があまり取れなかったので上海(上海 Shànghăi)に2泊だけ(笑)。滞在中に高速鉄道を使って無錫(无锡 Wúxī)に日帰りで行ってきました。
実はこれまで、僕の上海に対する印象はそれほどよくありませんでした。別に上海は何も悪くないのです。単にいつ行っても雨だったなぁと思うので(笑)。でも今回は一緒に行った友人が晴れ男だったのか、ず〜っと晴れていました。気温も暑いくらいでした。
そして、大陸に行ったのは多分5〜6年ぶり(前回は北京)です。やっぱり久しぶりなので、へーっと思うところが色々とありました。
まずはリニアモーターカーです。
皆さんご存知のとおり、上海には浦東空港から市内までをつなぐリニアモーターカーが営業運転をしていますね。僕は前に上海に行った時(2007年くらい)は乗れなかったので今回は絶対乗りたいと思っていました。そして、無事体験できました!(笑)
リニアモーターカーに乗ってその速さにももちろん驚いたのですが、リニアモーターカーを表す中国語が変わっていることに気づいてかなりビックリしました!
前に上海に行った時は、確かこう言っていたはずです。
磁悬浮列车
cíxuánfú lièchē
上海の浦東空港のロビーなどにあった表示板にもこう書いてあったのをはっきり覚えています。
でも、今では、こう書いてありました。
磁浮列车
cífú lièchē
やや?いつのまにか“悬 xuán"の字が抜け落ちたのですね!?確かに“磁悬浮 cíxuánfú"って言いにくいなぁと思っていたので、この変化は大歓迎ですが、ビックリでした〜。やはり、定着するにつれて言いやすいように変わって行ったということなのでしょうか。
それから、上海で地下鉄に乗っていた時のことです。何気なく優先席らしきところを見て、これまたビックリしてしまいました。新しい言い方になっていたのです。
爱心专座
àixīn zhuānzuò4
お〜!素晴らしい!(笑)
この言い方、いつ頃出てきたのでしょうか。もしかして上海だけなのでしょうか、それとも中国全土で使われているのでしょうか。まぁとにかく素晴らしいですよね。だって、これまで僕の知っていた優先席の言い方は次のような長ったらしいものでした。
老幼病残孕专座
lăo-yòu-bìng-cán-yùn zhuānzuò4
この言葉、何年か前に本欄でも書いたことがありました。“老"はお年寄り(“老年人 lăonián rén")、“幼"は子供(“幼儿 yòu'ér")、“病"は病人(“病人 bìngrén")、“残"はお体の不自由な方(“残障人 cánzhàng rén")、“孕"は妊婦(“孕妇 yùnfù")を指します。この5種類の人のための座席だ、という意味なのですね。
あの時原稿を書くに当たって何人かの中国人に優先席の言い方を尋ねてみたのですが、上海人も含めてみんな「“老幼病残孕专座"という言い方しかない」と言っていたように記憶していますから、この“爱心专座"という言い方はきっとここ数年くらいの間に出てきたのではないかなと推測しています。
このネーミングはなかなかいいですね!台湾では“博愛座 bó'ài zuò"と言っているようですが、それと匹敵するくらい素敵だと思いました。
あ〜、しかし言葉はドンドン変わっていきますねぇ。やはり、自分への投資だと思って時々中国に旅行に行かなければならないなと、改めて思いました。
伊藤祥雄
1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了
通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当
著書
- 文法から学べる中国語
- 中国語!聞き取り・書き取りドリル
- CD付き 文法から学べる中国語ドリル
- 中国語検定対策4級問題集
- 中国語検定対策3級問題集
- ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本