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翻訳コラム

COLUMN

第365回おかゆは飲むもの

2017.12.27
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

日本人的感覚で中国語を読んだり聞いたりしていると違和感を覚えたり、逆に中国人が日本語について違和感を覚えている様子だったりすることがあります。どちらも漢字を使い、字面が全く同じ形をしている単語も多いので、仕方ありませんが、文化の違いってなかなかにやっかいですね(笑)。

以前も書いたことがあったような気がしますが、ある日本語の文章を中国語に訳したものがあり、日本語原文で「けが人」とあるのを中国語訳文では“病人 bìngrén"と訳してありまして、僕はすごく違和感を覚えたので訳者に質問してみました。「ここは病人じゃなくてけが人ですけど?」

しかし訳者の中国人は「ええ、そうですね。」と当たり前みたいな顔をしているわけです(笑)。

つまり、中国語ではけが人も“病人 bìngrén"の中に含まれるようなのですね。

日本語ではどうですか?少なくとも僕は、けが人を「病人(びょうにん)」と言うことに大きな違和感を覚えます。「病人(びょうにん)」はやはり病気にかかった人であり、けがをした人は「けが人」だろうと思うのですよね。

もちろん、「けが人」という意味を表す中国語もあります。

受伤者
shòushāng zhě

伤员
shāngyuán

でも病院に運ばれてしまうと普通は“病人 bìngrén"ということになるそうです。面白いですよね〜。

それから、僕は合唱団に所属しているのですが、毎年1回コンサートを開きます。そこで友達や知り合いを招待するのですが、中国人の友達にチケットを渡すと、不思議そうな顔をしてこんなふうに言われることがあります。

「あれ?歌だけではなく楽器もあるんですね?」

もちろん、ピアノ伴奏やエレクトーン伴奏などがつくこともありますが、基本的には歌のコンサートです。中国人たちはいったいチケットの何を見て「楽器もあるんだ」と思うのでしょうか。

実は、チケットには「演奏会」と書いてあったからなのです。

実は、中国では“演奏 yănzòu"は楽器にしか使えないようです。

日本語でも「演奏(えんそう)」は普通楽器について使いますが、合唱のコンサートでも多くの合唱団が「演奏会(えんそうかい)」と銘打ってコンサートを開いています。でも中国では歌のコンサートについては絶対に“演奏会 yănzòuhuì"とは言わないようなのですね。合唱団のコンサートなら、普通はこんなふうに言うそうです。

演唱会
yănchànghuì

日本語には「演唱会(えんしょうかい?)」という単語はないですよね?こういうところ、中国語はとても厳密なのですね〜。

コンサートについては、他にも「あれ?」と思ったことがあります。

ある中国人がある文章の中でコンサートの聴衆のことを“观众 guānzhòng"と書いていたのです。

コンサートに来ている客は歌を聞きに来ているのだから“听众 tīngzhòng"というべきではないかと思い、その中国人に尋ねてみました。

彼女はしばし考えて、「確かに漢字の意味を考えると、“听众 tīngzhòng"と言うべきかもしれないけど、、、でもコンサートの客のことは普通“观众 guānzhòng"ですねぇ〜」と教えてくれました。

不思議ですねぇ。まぁ確かにコンサートに来ている人たちは、耳だけでなく目で見て楽しんでいるでしょうから、“观众guānzhòng"でも間違っているとは思わないのですが、コンサートを開くこともある身としては、「見に行くね!」と言われるよりは「聞きに行くね!」と言われた方が嬉しいもので(…どちらでも構わないのですがね…笑)、“听众 tīngzhòng"と言ってあげてほしいなぁと思ったりしました。

ちなみにラジオのリスナーのことは“听众 tīngzhòng"と言います。確かにラジオの場合は絶対に“观众 guānzhòng"とは言えませんね(笑)。

それから、薬は日本だと「飲む」ですが、中国では?

吃药
chī yào

そう、「食べる」という意味の“吃 chī"を使いますね。

逆に日本では「食べる」なのに中国では「飲む(喝 )」になるものがあります。

喝酸奶
hē suānnăi

そう、「ヨーグルト」は中国では普通飲み物です。色々なものがあるかもしれませんが、中国のヨーグルトは日本のものより液体に近く、ストローを挿して吸い込むことが多いと思います。だから普通は“喝hē"を使うようです。

喝粥
hē zhōu

そう、「おかゆ」も中国では飲み物とされるようですね(笑)。日本語だと「おかゆを食べる」でしょうね。「おかゆを飲む」とは、あまり言わない気がします。でもおかゆは確かに固形物と言いにくいですから、“喝 "を使うのも分からないでもありませんね。

こういう細かい違いはなかなか気付きにくいですから、出会うたびにストックしていかなければなりませんね〜。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本