第366回つなぎ言葉
先日ある中国人の先生が中国語で作文を書かせる宿題を添削しておられ、ちょこっと見せてもらいました(笑)。
すると、文1つ1つは割といいのですが、文と文のつなぎ方がどうもあまり適切ではない気がしました。
日本語って文を言いきらずに、適当なつなぎ言葉を使ってダラダラと文をつないでいくことができますね。しかもあまり論理的な話の進め方を訓練できていない人が多いようで、結構論理がとっちらかっています(笑)。
この時見せてもらった作文の一部を紹介しようと思ったのですが、はっきり覚えていないので、うろ覚えでなんとなく復元してみます(笑)。
这家饭馆的中国菜特别好吃。不过我点了很多菜。所以我吃不下了。
この中国語、“不过 búguò"と“所以 suŏyĭ"という2つのつなぎ言葉が使われていますね。つなぎ言葉を使うこと自体はいいのですが、どうして1文目の後で“不过(しかし)"を使っているのかが、ちょっと分かりませんでした。
だって、「料理がおいしい」けど「たくさん注文した」って、論理的におかしいですよね?おいしければたくさん注文するでしょうに。(笑)
そこで、ちょっとこの文を日本語に訳してから考えてみることにしました。
「このレストランの中華料理は特別においしい。しかし私は料理をたくさん注文したので、食べきれなくなった。」といような感じでしょうか。
ああ、そうか。「おいしい」けど「注文した」ではなく、「おいしい」けど「食べきれなくなった」というふうにつなぎたかったのか!だから逆接を表す“不过"を使っていたのですね!
でもよく見てください。1文目「ここの中華料理はおいしい」の後に直接“不过"をつけて「たくさん注文した」と書くと、「ここの中華料理はおいしいけどたくさん注文した」となってしまいますよね。日本語で読んでもかなり変な文だと思います。
どうしてもこう言いたいなら、“不过"と“我点了很多菜"とを直接くっつけないようにするため間に“因為yīnwèi"をつけて
这家饭馆的中国菜特别好吃。不过因为我点了很多菜,所以我吃不下了。
このレストランの中華料理は特別においしい。
しかし私は料理をたくさん注文したので食べきれなくなった。
このようにすると、「おいしいけど食べきれなくなった」という適切なつながりになりますね。
でも普通中国語はこんなややこしいことはあまり好きではなく、もっとシンプルにする方が好まれるのではないかと思います。そもそも中国語では論理的に話を組み立てて行きますので、“不过"という接続詞から導かれる結論部分(上の例文だと“我吃不下了"の部分)はできるだけ“不过"に近いところに置くようにするのが自然だと思います。
といって次のようにしてしまうと…
这家饭馆的中国菜特别好吃。不过我吃不下了。
このレストランの中華料理は特別においしい。しかし食べきれなくなった。
これだけだと、食べきれなくなった理由が分かりませんね。この後にその理由を追加するしかなくなります。それでもいいですが、こんなふうにしたらどうでしょうかね。
这家饭馆的中国菜特别好吃。所以我点了很多菜。结果我吃不下了。
Zhè jiā fànguăn de Zhōngguócài tèbié hăochī.
Suŏyĭ wŏ diăn le hěn duō cài.
Jiéguŏ wŏ chībuxià le.
このレストランの中華料理は特別においしい。
そこで私は料理をたくさん注文した。
その結果食べきれなくなった。
中国語は論理的だと書きましたが、更にできるだけ時間順にフレーズを並べていくという傾向もあるようです。中国語で作文する時は、あまり話をひっくり返したりせずに、論理的に、そして時間順にフレーズを並べ、適切なつなぎ言葉を使うようにしたいですね。
伊藤祥雄
1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了
通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当
著書
- 文法から学べる中国語
- 中国語!聞き取り・書き取りドリル
- CD付き 文法から学べる中国語ドリル
- 中国語検定対策4級問題集
- 中国語検定対策3級問題集
- ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本