第374回漢文の知識
皆さん、高校生の時に漢文を勉強しましたよね?
入試で漢文が出題される大学は非常に少ないらしく、高校でも漢文はあまり一所懸命には教えないような雰囲気らしいのですが、それでも全く触れないで学生時代を過ごしてきた人って、いないのではないでしょうか?
僕は、今中国語で飯を食っているくせに、漢文は不得意でした〜(苦笑)。それでも、まぁね、少しは勉強しました。
そして今振り返ると、結構現代中国語にも漢文で習った言葉が出てくるなぁと思ったのです。
僕の生徒さんの中に、ある言葉の意味を取り違えている人がいまして、「それって漢文でも出てくるアレじゃないですか!」というようなことを授業で言ったのですが、その生徒さんも漢文はあまりお得意でなかったのか、反応がイマイチでした(笑)。
でも、もし漢文の知識が応用できるなら、応用しない手はないですよね!というわけで、今日はちょっといくつか漢文でも出てきた言葉で現代中国語でも使う言葉をご紹介します。
然后 ránhòu
簡体字表記では上記のように書きますが、"后 hòu"という字は「後」という字の簡体字としても使われます。つまり上記の単語は日本の漢字体で書くと
然後
となります。
さて、この「然後」という単語、漢文で見覚えがありませんか?
そう、「しかるのち」と読むやつですね!「その後」というような意味です。
「しかるのち」は現代日本語でもそのまま使えると思うので、"然后 ránhòu"は「しかるのち」と覚えておいてもいいくらいです。結構"然后 ránhòu"の意味を忘れてしまう人もいるので、漢文を思い出して、これは「しかるのち」だということを認識しておいてくださいね。
不然 bùrán
これ、漢文風に読むとどうなりますか?
そう、「しからずんば」「しからざれば」ですよね!意味は「そうでなければ」です。
そして現代中国語の"不然 bùrán"も正に「そうでなければ、さもなければ」という意味で使います。これは覚えやすいですね!
否则 fŏuzé
これは日本の漢字体で書くと「否則」です。漢文風に読むと「しからずんばすなわち」「しからざればすなわち」となり、上記"不然 bùrán"と同じような意味です。
そして現代中国語でも"否则 fŏuzé"は"不然 bùrán"と同じように使います。「そうでなければ、さもなければ」という意味です。
不如 bùrú
これ、漢文風に読むと「しかず」ですね。この言葉の使い方、分かりますか?
"A 不如 B(AはBにしかず)"と言うと「AはBにはおよばない」「AはBほどではない」という意味です。つまり「A<B」とでも書きますか、要するにBのほうがよいもの、優れたものだと言うことを表す言い方です。現代中国語でも全く同じように使います。
しかし僕はこの言葉を現代中国語で習ったばかりのころ、いつも混乱していました(笑)。結局AとBのどちらの方が良いのだったかなと。
そこで思い出したい以下の漢文。
百闻不如一见(百聞は一見にしかず)
băi wén bùrú yí jiàn
この言葉は、広く日本でも使われますから意味は誰でも知っていますよね?「百回聞くよりも一回見たほうがよくわかる」というような意味です。色々長々と説明を聞くよりも、実物を一回見た方がよい、ということですよね。
つまり、"百闻"と"一见"を比べて"一见"のほうが優れていると言っているわけですから、"不如"の後ろに入ったもののほうが、よいものとされるわけです。
これでもう"不如 bùrú"も怖くないですね!
漢文の知識(というほどのものではありませんが・・・苦笑)も現代中国語の学習に結構役立つので、時々思い出してみてくださいね。
伊藤祥雄
1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了
通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当
著書
- 文法から学べる中国語
- 中国語!聞き取り・書き取りドリル
- CD付き 文法から学べる中国語ドリル
- 中国語検定対策4級問題集
- 中国語検定対策3級問題集
- ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本