第377回受け身
先日、卓球の福原愛さんの中国語の話を書きましたが、彼女の言葉の中で受け身の表現が使われていましたね。
とりあえず原文をここでもう一度引用しますね。
奥运村的厕所早上坏了,正要找人修,结果晚上被我不小心修好啦。我是不是很厉害。
Àoyùncūn de cèsuŏ zăoshang huài le,
zhèng yào zhăo rén xiū,
jiéguŏ wănshang bèi wŏ bù xiăoxīn xiūhăo la.
Wŏ shì bu shì hěn lìhai.
日本語に訳すとこんな感じでしょうか:
「選手村のトイレ、朝壊れてたの。誰かに直してもらおうと思ってたんだけど、結局夜、私がうっかり直しちゃった。私ってすごくない?」
この文のミソは“不小心"だと思います。僕はこれを「うっかり」と訳しています。僕は最初この文を見た時、「うっかり」したのは「トイレさん(笑)」だと思いました。つまり、トイレが「ふふん、故障してやったぞ。直せるものなら直してみな。」と思っていたのに、うっかりしている内に直されてしまったよ、という意味かなと思いこんでしまったのです。
でもこの「うっかり」はトイレではなく福原選手の方ですね。
つまり、「故障したトイレをいじっていたら、あらま、うっかり直しちゃった」という感じですね。
本来修理は専門の業者がやるべきなのに、専門家でない私(福原選手)がうっかりなおしちゃったよ、といった感じでしょうか。
これは文法的にもはっきりしています。“被我不小心修好啦"は受け身の言い方を使っています。受け身は次のような語順で表されます。
主語(A)+‘被'+(動作を行う)人(B)+動詞(C)
これで「AはBにCされる」という意味になります。
つまり、実際にはBさんがCという動作をすることになりますね。
福原選手の書いた文を上記に当てはめてみると
A・・・省略されていますが「トイレ」
B・・・“我"つまり福原選手
C・・・“不小心修好"
BさんがCという動作をするのですから、“我(福原選手)"が“不小心修好"をしたことになります。つまり“不小心"は、トイレではなく福原選手の動作にかかっているのですね。
もしトイレさんが「うっかり」したのであれば“不小心"は“被"の前に置かれるはずですものね。中国語は、修飾語を被修飾語の前に置きますから。
中国語の受け身の文は、“被"の後ろだけでも文として成立するので、誰が何をしたのか混乱したら、“被"の後ろだけを文として読んでみると分かりやすいかもしれません。
中国語はあまり受け身の文を好みませんので、お目にかかる機会は少ないかもしれませんが、見つけたらよく観察して自分のものにしていきたいですね〜。
伊藤祥雄
1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了
通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当
著書
- 文法から学べる中国語
- 中国語!聞き取り・書き取りドリル
- CD付き 文法から学べる中国語ドリル
- 中国語検定対策4級問題集
- 中国語検定対策3級問題集
- ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本