第379回最近言わなくなったよね
僕は大学に入ってから中国語を勉強し始めました。先日年数を数えていて愕然!なんと去年30周年だったのです!いや〜、ビックリですね。20代の中国人よりも僕の方が中国語に関しては先輩です(笑)。
30年もたつと、色々と中国語も変わって行っています。例えば、お店などで店員を呼ぶ時、僕が最初に中国語を習った時のテキストにはこんなふうに書いてありました。
同志!
tóngzhì
今本屋さんに並んでいる中国語のテキストを見ても、こんな言葉はまず見つかりません。隔世の感がありますな(笑)。
最近はどうやって呼びかけますかね。若い女性の店員になら、最近は“美女 méinǚ"なんていう素敵な呼びかけ方があるようです。“小姐 xiăojiě"もいいかもしれませんが、最近はそう呼ばれるのを嫌がる人も多いそうですね。
では、若い女性以外の場合はどうしましょうか。以前“服务员 fúwùyuán"と呼びかけた時、呼びかけ方が80年代の雰囲気だったのか(笑)ぞんざいに響いたようで、しかめっ面で「は〜?」と言われたことがありましたっけ。“服务员"という言葉のせいなのか、僕の口調が悪かったせいなのか判然としませんが、それ以来僕は“服务员"という言葉をあまり使わなくなりました(笑)。
僕が見た中でスマートだなと思ったのは“你好! Nĭ hăo !"と店員などに呼びかける方法ですかね。なんだか見ていてとても好感が持てたので、僕もそうしています。
他にも次のようなものがこの30年ですっかり変わったな〜と思っています。
タクシー
僕がタクシーという単語を習った時は、こんなふうに言っていました。
出租汽车
chūzū qìchē
今でももちろんこう言って通じないとは思いませんが、最近はあまり言わなくなった気がします。最近の言い方は:
出租车
chūzūchē
これについてはある中国語の先生が次のような話をしておられました。つまり、僕が中国語を習い始めた80年代や90年代は、まだ人々にとって身近な“车 chē"は自転車(“自行车 zìxíngchē")でしたから、自動車のことははっきり“汽车 qìchē"と言う傾向にあり、タクシーも“出租汽车"と言っていたのだろう、と。ところが最近は人々にとって身近な“车 chē"は自動車になってきており、あえて“汽车qìchē"という言い方をしなくてもよくなってきているのだろう、と。なるほど〜、確かにそうかもしれませんね。
さらに広東語の影響で、タクシーのことを“的士 díshì"と言ったり、タクシーに乗ることを“打的 dă dí"のように言うことも多くなってきました。変化が激しいですねぇ。
カレー
カレーってどう言うかご存知でしょうか。今はみんな次のように言いますかね?
咖喱
gālí
僕の持っている電子辞書では、中日でも日中でもこの言い方しか載っていないようなのですが、昔は確か次のように言っていたような気がするのですよね。
加里
jiālĭ
カレーライスも“加里饭 jiālĭ fàn"という言い方が多かったような気がするのですよね〜。ただ、“咖喱"と“加里"の両方とも出ている辞書もあるようです。ですから“加里"という言い方が完全に消えたわけではないと思うのですが、少なくなっているとは言えそうです。
人気がある
「人気がある」という表現、最近はこんなふうに言えますね。
有人气
yŏu rénqì
正に日本語の「人気がある」そのまんまですね!多分日本語から作った表現なのでしょうね。
しかし僕が中国語を習い始めた頃は“有人气"という言い方はありませんでした。では「人気がある」と言いたい時にどう言っていたかというと:
受欢迎
shòu huānyíng
(直訳)歓迎を受ける、歓迎される
この言い回しは今でも当然使われる言い方なので、今回のタイトル「最近言わなくなったよね」という感じではないのですが(笑)、“有人气"という言い方が現れた分、使用頻度は少し減ったかもしれません。
最近中国語を始めた人は古い言い方など知らなくてもいいのですが、昔から中国語を勉強している人は、時々自分の中国語を更新(?)しなければなりませんね〜。
伊藤祥雄
1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了
通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当
著書
- 文法から学べる中国語
- 中国語!聞き取り・書き取りドリル
- CD付き 文法から学べる中国語ドリル
- 中国語検定対策4級問題集
- 中国語検定対策3級問題集
- ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本