第398回長いほうがお得
以前、中国語検定2級の過去問の出題傾向などを考えたりしていた時のこと、正しい文を選ぶ問題の中でこんな文が出てきました。
上课的时,~
もちろんこの文は間違っている文で、正解の文は以下の通り。
上课的时候,~
shàngkèdeshíhou,~
授業を受けている時は、~
この問題を見て、僕はすぐにある生徒さんの顔が思い浮かびました。その生徒さんは、「~する時/~した時」と言いたい時にいつも
~的时
と言うのです。それを聞くと僕はいつも笑いそうになってしまうのですが、一体どうしていつもこう言うのか不思議で不思議で、一度わけを尋ねてみました。すると:
「だって、“时候 shíhou”って日本語では意味がちょっと違うから頭に入らないんです。“~的时”で十分わかるんじゃないですか?短い方が覚えやすいし。」
う~む。だったら“的”も取れ!(笑)
「~する時/~した時」と言いたい時は、2つ言い方がありますね。
1つは“~的时候”、もう1つは“~时”です。上記の「授業を受けている時」なら次の2つの言い方ができます。
上课的时候/上课时
shàngkèdeshíhou/shàngkèshí
上記生徒さんは短い方が覚えやすいというので、だったら“上课时”の言い方のほうを使えばいいのですが、なぜか“的”を入れてしまうので変になってしまうのですね~。
ただ、僕は声を大にして言いたい!どうして短い言い方を好むのですか?と。(笑)
もちろん、短い“上课时”も正しい言い方です。でも僕は、初心者だったら“上课的时候”を使うことをおすすめしたいと思います。だって、中国語って発音が難しいでしょう?短い言い方ではキチンと聞き取ってもらえないかもしれないじゃありませんか。
中国語は発音が本当に難しいので、ちょっとしたことですぐ通じなくなります。聞いている中国人側としては、やはり手がかりがたくさんあったほうが、相手(外国人)の言っていることを推理しやすくなりますよね?ですから、発音に自信のない人ほど、たくさん喋った方がいいのです。
上の例でも、“上课时”の“时 shí”の第2声がしっかり発音できていなければ聞き取ってもらえません。でも“上课的时候”と言えば、声調が不安定でも分かってもらえる可能性が高まりますよね?
とある中国語のテキストで、“天坛 tiāntán”というのが通じず“天堂 tiāntáng(天国のこと)”と思われてしまったという笑い話が載っていました。
“天坛(日本語の漢字表記では「天壇」)”はご存知ですよね?北京にある世界遺産の1つです。とても有名ですから、北京の人で知らない人は絶対にいません。でも発音がまずいと通じないのですね~。でもこれだって、“天坛公园 tiāntángōngyuán”と言えば“tán”を“táng”と発音してしまったとしても多分通じたはずです。
どうも「少しでも短い方が労力が少なくて済むからイイ」と思って、できるだけ短い表現で覚えようとする人が、最近多いような気がしますが、どうかそんなケチなこと言わないで、出血大サービスしてほしいと思います。もちろん短く言っても相手にバッチリ伝わるようになるのが理想ですが、そんなすぐには無理ですよ~。まずはしっかりたくさん相手に色々伝えることから始めませんか?
伊藤祥雄
1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了
通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当
著書
- 文法から学べる中国語
- 中国語!聞き取り・書き取りドリル
- CD付き 文法から学べる中国語ドリル
- 中国語検定対策4級問題集
- 中国語検定対策3級問題集
- ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本