第402回比較の文と副詞
今日はちょっと比較の文の話をしたいと思います。
比較の文(AはBより~だ)では形容詞が使われることが圧倒的に多いですね。例えば:
今天比昨天热。
jīn tiān bĭ zuó tiān rè
今日は昨日より暑い。
この文の場合“热 rè(暑い)”という形容詞が使われていますね。
さて、それでは、比較の文ではなく単に「今日は暑い。」と言いたい時はどんなふうに言いますかね?
今天热。
jīn tiān rè
これでいいですか?
そうですね、文法的に間違っているわけではありませんが、こう言うと「今日の方が暑い」というようなニュアンス、つまり何かと比較しているニュアンスが漂ってしまうので、単に「今日は暑い」という事実を言いたい場合は、こう言わなければなりません。
今天很热。
jīn tiān hěn rè
そう、“很hěn”を形容詞の前に置くのです。
この“很hěn”は辞書やテキストにはよく「とても」というような意味と書いてあるのですが、単に形容詞の前に置かれていると多くの場合あまりはっきりした意味はありません。では何のために使われているかというと、これがないと形容詞に比較のニュアンスがついてしまうのですね。逆に言うと、これをつけることで形容詞の比較のニュアンスを消すことができるのです。
中国語を始めて間もない時期にこういう“很 hěn”を使う形容詞の文を習いますが、あまり詳しく説明されないことが多いので、この辺り混乱している人も多いようです。比較の文を作る時によく間違ってこんな文を言う人がいます。
×今天比昨天很热。
さっきも書いたように、“很 hěn”を使うと比較のニュアンスが消えてしまいます。だから、比較の文の中では“很 hěn”を使ってはいけないのです。
“很hěn”以外にも、ふつう「程度の副詞」と言われる副詞は、比較の文の中で使うことができません。例えば“比较 bĭjiào(わりと)”“真 zhēn(本当に)”“太 tài(あまりにも)」“~极了 jí le(きわめて~)”等。
しかし、“更 gèng(いっそう)”“还 hái(もっと)”は、比較のニュアンスを消すことがない(むしろ比較のニュアンスを強める)ので、比較の文の中で使っても大丈夫です。例えば:
今天比昨天更热。
jīn tiān bĭ zuó tiān gèng rè
今日は昨日よりもっと暑い。
ちょっと混乱している人は、整理しておいてくださいね。
伊藤祥雄
1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了
通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当
著書
- 文法から学べる中国語
- 中国語!聞き取り・書き取りドリル
- CD付き 文法から学べる中国語ドリル
- 中国語検定対策4級問題集
- 中国語検定対策3級問題集
- ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本