第420回#私のお気に入り 結果補語
今日はまたまた「私のお気に入り」を書きます。今回は「結果補語」です!
結果補語は、動作をした結果を補う言葉ですね。例えば:
看完
kàn wán
これは“看(見る)”という動詞に“完(終わる)”という結果補語がくっついた形です。意味は「見る」という動作をしたら「終わる」という結果に至った、つまり「見終わる」ということです。
“看完”という組み合わせは日本語ネイティブにとってとても分かりやすいですね。だから僕も授業で解説する時は必ず“~完”という結果補語を例として使います。
- 看完 kàn wán (見終わる)
- 听完 tīng wán (聞き終わる)
- 吃完 chī wán (食べ終わる)
- 喝完 hē wán (飲み終わる)
いずれも分かりやすいですよね~。
でも結果補語には「これ必要?」と思うようなものもあります。例えば:
离开
lí kāi
離れる
これ、一つの動詞として覚えている人も多いかもしれませんし、辞書にはこの2文字でもよく掲載されていますよね。でも実は1語ではなく、“离(離れる)”という動詞に“开(開く)”という結果補語がくっついた形です。つまり「離れた結果、自分との距離が開く」ということを表します。(“开”は方向補語と捉える人もいますが、今日は結果補語扱いとしますね。)
ねぇねぇねぇ、「離れ」たら距離が「開く」に決まってるじゃん、なんで結果補語が必要なの?
って思いませんでした?(笑)
我々日本語ネイティブにとっては非常に不思議なことかもしれませんが、中国語の動詞はあくまで「動作」しか表さないようです。「この動作をしたらふつうこんな結果が出るでしょ」と想像で分かることについては、日本語では言わなくてもいいわけですが、中国語では言わなければならないらしいのです。
「想像で分かることについては、日本語では言わなくてもいい」だなんて、こういう所にも、日本の「忖度」の文化(笑)が表れていますね。しかし中国語はというと、論理の飛躍を許さない論理的な言語ですから、「忖度」してくれないわけです。
例えば“走开”という言葉を見てみましょうか。これも“离开”と同じで“开”という結果補語がついています。
結果補語なしで“走!”とだけ言うと「歩け!」「出発しろ!」「行け!」「行くぞ!」など色々な場面が考えられますね。“走”は「歩く」「(この場から)出発する」という動作しか表さないので、動作そのものの命令でしかありません。
でも“走开!”というと「歩いた結果私との距離を広く取れ」ということで「どこへなと行ってしまえ!」という突き放した場面しかないでしょうね。“走!”だけだと話者も一緒に出発する場面でも使われます。でも“走开!”だとその可能性はなくなります。つまり、結果補語がつくことでより場面が具体的になるわけです。それに「自分から遠く離れてくれ」という気持ちもこの結果補語のおかげで表すことができます(苦笑)。いやぁ、おもしろいです。
僕がとても不思議だったのはこれです!
记住
jì zhù
覚える
だってね、“记”だけでも「覚える」という意味だってよく書いてあるわけですよ。じゃぁこの“记”と“记住”の違いってなんなの?って思いませんでしたか?
結局ね、“记”って「覚える」という動作だけしか表さないのですね。しっかり記憶に定着したかどうかまでは言えない。だから結果補語の“住(定着する、安定する、安住する)”をくっつけて“记住”と言わなければ本当に覚えたことにはならないのです。
最後に僕が一番びっくりしたのをご紹介(大げさ)。
杀死
shā sĭ
殺す、死なせる
殺したら死ぬに決まってるじゃん(笑)。中国語って本当に面白いですね!
伊藤祥雄
1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了
通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当
著書
- 文法から学べる中国語
- 中国語!聞き取り・書き取りドリル
- CD付き 文法から学べる中国語ドリル
- 中国語検定対策4級問題集
- 中国語検定対策3級問題集
- ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本