第430回比較の“有”
比較の言い方、皆さん得意ですか?「AはBより~~だ」というようなやつですね。例えば:
我比他大。
Wŏ bĭ tā dà.
私は彼より年上だ。
橘子比香蕉贵。
Júzi bĭ xiāngjiāo guì.
ミカンはバナナより(値段が)高い。
ところで皆さんは、こういった比較の文の否定形はどう習いましたか?
普通に“不”を使って否定しても、まぁ間違ってはいません。上記2例を“不”で否定すると、こんな感じでしょうか。
我不比他大。
Wŏ bù bĭ tā dà.
私は彼より年上というわけではない。
橘子不比香蕉贵。
Júzi bù bĭ xiāngjiāo guì.
ミカンはバナナより(値段が)高いわけではない。
ただ、このような“不比~”という言い方は、客観的な比較ではなく、話している相手の予想を否定するようなニュアンスになるようです。
つまり、“我不比他大。”であれば、“我比他大。(私は彼よりも年を取っている)”という相手の予想を、不満交じりに否定する感じ。ちょっと大げさに日本語に訳すと「私が彼より年上なんてとんでもない。」という感じでしょうか。多くの場合、両者の間に差はあまりないということを表すようです。
ミカンの方の例文だと、「ミカンはバナナより高い」という大方の予想に反論するような感じで「ミカンはバナナより高いだなんて、そんなことないよ!」というようなニュアンスなのですね。
では、客観的に言いたい場合はどうすればよいか。おそらく多くの人が「比較の否定」として習ったのが使えます。そう、“没有”を使うやつですね。上記2例を“没有”を使って否定してみます。
我没有他大。
Wŏ méi yŏu tā dà.
私は彼ほどの年齢ではない。(私は彼より年下だ)
橘子没有香蕉贵。
Júzi méi yŏu xiāngjiāo guì.
ミカンはバナナほど(値段が)高くない。(ミカンはバナナより安い)
“比”は使わないのですね~。比較の構文なのに。。。
でも、どうして“没有”で比較の意味が出るんだろう。。。って悩みませんでしたか?(笑)
実は、“有”を使った構文が元々存在するのです。あまりテキストに出てこないのでご存知ないかたも多いかもしれませんね。上記2例から作ってみると、こんな文です。
我有他大。
Wŏ yŏu tā dà.
私は彼くらいの年齢です。
橘子有香蕉贵。
Júzi yŏu xiāngjiāo guì.
ミカンはバナナくらいの価格だ。
この“有”を使う構文“A+有+B+形容詞”は、「AはBくらいのレベルを有している」というような意味です。だから“有”を使うのですね。
そしてそれを否定すると、“有”の前に“没”を置いて“A+没有+B+形容詞”となり、意味は「AはBほどのレベルはない」「AはBほど~ない」ということになるわけです。
僕もこの“A+没有+B+形容詞”という比較の否定のような意味を表す構文を習った時、「なんで“没有”を使うのかなぁ」とちょっと悩んだり、とっつきにくいなと思ったりしたものですが、もともと“A+有+B+形容詞”という構文があり、その否定文なのだと知って以降は悩まなくなったように思います。皆さんはいかがでしょうか。
伊藤祥雄
1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了
通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当
著書
- 文法から学べる中国語
- 中国語!聞き取り・書き取りドリル
- CD付き 文法から学べる中国語ドリル
- 中国語検定対策4級問題集
- 中国語検定対策3級問題集
- ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本