第442回#私のお気に入り 多音字
前回のメルマガで“中”という字が実は“多音字 duōyīnzì(複数の音を持つ漢字)”だという話を書きました。
今日は、他の“多音字”についても見て行きましょう。実は僕、“多音字”って大好きなんですよ(笑)。
好 hăo / hào
日本だとこの字は「好きだ」という意味でしか使いませんね。だから、入門レベルの人に中国語をお教えしていると、時々“好的!”というのを「好きだ」と訳してくれたりするのでびっくりすることがありますが、まぁ入門レベルなら無理もありませんね。
実はこの字も多音字です。
「良い」という意味の場合はhăo
「好き」という意味の場合はhào
僕が最初にこの字が「好き」という意味で使われているのを見たのは、大学1年の時のテキストの中でした。たしかこんな文でした。
中国人是好客的。
Zhōngguórén shì hàokè de.
中国人は客好きです。
あと、初級でも必ず習う単語がありますね。
爱好
àihào
趣味
「趣味」というのは「読書」とか「映画鑑賞」というような、やるのが好きなことという意味の「趣味」です。だからこの“好”はhàoと読むのですね。
あと日本語でもよく見る「好奇心」という言葉、中国語でもほぼ同じ意味で使う単語ですが、こんな発音で読みます。
好奇心
hàoqíxīn
つまり「奇(珍しいこと)を好む心」という意味なのですね。
看 kàn / kān
この字はやはり「kàn」と読んで「見る、読む」という意味で使うことが圧倒的に多いと思うのですが、実はこれも多音字。「kān」と読む時もあるのです。
では「kān」と読むのはどういう意味の時でしょうか。次の単語から意味を類推してみましょうか。
看护 kānhù(看護する、介抱する)
看守 kānshŏu(見守る、看守)
看家狗 kānjiāgŏu(番犬)
そう、「見守る」「見張る」というような意味なのです。
留守番をすることは“看家”と言いますが、これを「kàn jiā」と読んではいけません。そう読むと、単に家を見ているだけですね(笑)。変な人が侵入したりしないようにしっかり「見張る」のであれば、「kān jiā」と読まねばなりません。
结 jié / jiē
意外と知られていないようですが、この“结”という字には「jié」以外に「jiē」という音もあるのです。「jié」と読むのは“结婚 jiéhūn(結婚する)”“结局 jiéjú(結末)”など、「結ぶ」というような意味で使われる場合ですが、「jiēと読むのは「(果実が)なる」という意味の時です。
ですから、実は次の単語は意味によって2つの読み方があります。
结果
日本語と同じ「結果(けっか)」という意味で使われる場合は「jiéguŏ」と読みますが、「(木が)果実をつける」という意味なら
结果
jiē guŏ
と読むのです。その昔『西太后』という映画を見た時、こんなシーンがありました。皇帝の一人目の子供が生まれた時、皇帝は生まれたのが女の子だったのをがっかりするのですが、側近がこんなふうに慰めていました:
先开花,后结果
xiān kāi huā, hòu jiē guŏ
このことわざのような言い回し、辞書を見ると「一姫二太郎」とか書いてあるのですが、少なくともこの映画での使われ方では、男の子がほしかった人に慰める感じで「先に花が開き、後に果実がなる」(先に女の子が生まれたから、次はきっと男の子ですよ)という意味のようですね。この映画でもきっちりと「jiē guŏ」と読んでいたのをはっきり覚えています。
こういう多音字っておもしろいなぁと思います。基本的に漢字1文字につき1つしか発音がない中国語ですが、それだけに、僕は多音字の存在がとても気になるし、なんか大好きなんですよね(笑)。皆さんはいかがですか?
伊藤祥雄
1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了
通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当
著書
- 文法から学べる中国語
- 中国語!聞き取り・書き取りドリル
- CD付き 文法から学べる中国語ドリル
- 中国語検定対策4級問題集
- 中国語検定対策3級問題集
- ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本