翻訳コラム

COLUMN

第448回台風の名前

2019.09.25
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

去年は台風が本当に多かったですね。それも、それぞれがとても大きくて強い。これも地球温暖化のせいなのでしょうか?だとしたら今後もこんな傾向が続くということでしょうか?困りますねぇ。

さて、我々の国日本では、台風は番号で呼んでいますね。例えば「台風3号」、「台風25号」というように。でもアジア各国では共通の名前をつけて呼んでいます。一応気象庁のホームページを見ると、台風情報のところに名前も書いてくれています。ニュースなどでは全く言われないので日本の人はほとんどだ~れも知りませんよね?(笑)

台風とは、北西太平洋(赤道より北、東経180度より西)と南シナ海で発生した一定以上の勢力を持つ熱帯性低気圧のことを言うようです。そして、台風の被害に対処するために結成された台風委員会という国際組織が2000年から台風に加盟国共通で名前を付け始めました。この国際組織には14の国と地域が加盟しており、それぞれ10個ずつ名前をもちよって140個の名前のリストを作り、台風が発生するたびにリストの順番どおりに名前をつけていきます。140個目まで行ったら、また最初に戻るそうです。

順番はカンボジア、中国、北朝鮮、香港、日本、ラオス、マカオ、マレーシア、ミクロネシア、フィリピン、韓国、タイ、アメリカ、ベトナムです。

令和になって初めての台風だった台風3号は「セーパット(Sepat)」という名前だったそうです。これはマレーシアが提出した10個の名前のうちの3つ目。意味は淡水魚の名前だそうです。もちろん中国も名前を10個提出しています。せっかくですから、中国が提出している名前を順番に書いておきます。

  • 海葵 hăikuí イソギンチャク
  • 玉兔 yùtù 月のウサギ
  • 风神 fēngshén 風の神
  • 杜鹃 dùjuān ホトトギス
  • 海马 hăimă タツノオトシゴ
  • 悟空 wùkōng 孫悟空
  • 白鹿 báilù 白い鹿
  • 海神 hăishén 海の神
  • 电母 diànmŭ 雷の神
  • 海棠 hăitáng カイドウ(日本語でも「海棠」…花の名前)

台風の名前ですから、風や雨に関係のある名前が多いですが、中には月のウサギや孫悟空のような架空のもの、イソギンチャクやホトトギスやカイドウなどの動植物もあり、楽しいですね。日本や他の国の選んだ名前も調べてみると、様々な文化のことが知れて面白いかもしれません。興味のある人はぜひ調べてみてください。

それに、中国や台湾の人と話す時に台風の名前を知っていると話が通じやすいと思うので、今来ている台風の名前を日本語と中国語でなんと言うか、くらいは調べておくといいと思います。手前みそですが、NHK中国語放送のニュースでは、昨年から台風のニュースを出す時に台風の名前も言うようになりました。例えば令和発の台風3号なら:

今年第3号台风“圣帕”…
Jīnnián dì sān hào táifēng “shèngpà”…

自分で調べるのが面倒であれば、NHK国際放送の中国語ニュースを見聞きしたりHPでテキストをチェックしてみてください!

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本