第458回離合詞
今日は語彙のお話でもしましょうか。。。
中国語には「離合詞」なるものが存在しますが、ご存知でしょうか?
そうですね、入門でも習う語彙から例を出すと、“游泳 yóu yŏng”がありますね。
この単語は2文字で「泳ぐ」という意味の1つの動詞なのですが、単語の構造は「動詞+目的語」となっています。つまり“游”が動詞で“泳”が目的語なのです。
だから、動詞の重ね型を作るのであれば、こうなります。
×游泳游泳
○游游泳
そう。動詞“游”の部分だけを重ね型にします。
こんなふうに、まるで1語かのような姿をしているのに実は1文字目と2文字目の関係は「動詞+目的語」の関係になっており、場合によっては間に他の成分が入ったりする可能性のあるものを“离合词 líhé cí (離合詞)”と呼んでいます。
他にも“滑雪 huá xuě (スキーをする)”とか“滑冰 huá bīng (スケートをする)”とか“见面 jiàn miàn (会う)”など、離合詞は結構たくさんあります。
でも、“滑雪”も“滑冰”も“见面”も、漢字の意味から考えるとその構造が「動詞+目的語」であることが比較的容易に分かりますよね?
滑雪…雪を滑る→スキーをする
滑冰…氷を滑る→スケートをする
见面…顔を見る→会う
時には“唱歌 chàng gē (歌を歌う)”のように、ふつうに「動詞+目的語」として見えてしまうような動詞も離合詞扱いされることがあります。これって離合詞?と僕なんかは思うのですがね(笑)。
我々日本語ネイティブにとって難しいのは日本語に訳した時に「動詞+目的語」の構造をしているように見えにくいものですね。最初に挙げた“游泳”のように。
例えばこれはどうでしょう?離合詞だと思いますか?
毕业 bì yè 卒業する
日本語では「卒業する」と訳してしまいますので、この語の構造が「動詞+目的語」のようには見えないかもしれません。でもこれは「業を終える」というような感じの構造の離合詞です。だから、「大学を卒業する」は“毕业大学”とは言えません。だって“毕”という動詞の後ろにはすでに“业”という目的語があります。その後に更に別の目的語を置くことはできないのです。だから、“大学毕业(無理に直訳すると「大学に関してはその学業を終えた」)”としなければならないのです。
结婚 jié hūn 結婚する
これも日本語ネイティブから見ると離合詞とはどうしても思えませんね。でもこれも離合詞です。「婚儀を結ぶ」という意味だと考えれば離合詞っぽく見えてくるのではないでしょうか?
帮忙 bāng máng 手伝う
これはどうですかね?分かりやすいほうですかね?“帮”は「助ける、手伝う」ですから、“帮忙”だと「忙しいのを手伝う」という意味でしょうか?
努力 nŭ lì
これは日本語の漢字の知識では、全く離合詞という感じがしませんね。“努力”という単語は形容詞として使われることもありますが、実は動詞として使われる場合は離合詞扱いなのです。“努”には「できるだけの力を出す」という意味があるので、“努力”は「力を出す」という意味。そこから「努力する」「一所懸命やる」という意味が出てくるのですね。
例えば:
你再努一点力吧。
Nĭ zài nŭ yìdiăn lì ba.
もう少し頑張りなよ。
“结婚”が離合詞と聞いてびっくりしたものですが、“努力”も離合詞だなんて、もっとビックリではありませんか?こういうの、面白いんですよねぇ。
伊藤祥雄
1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了
通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当
著書
- 文法から学べる中国語
- 中国語!聞き取り・書き取りドリル
- CD付き 文法から学べる中国語ドリル
- 中国語検定対策4級問題集
- 中国語検定対策3級問題集
- ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本