翻訳コラム

COLUMN

第4回特許権行使における日米比較の例(実務上の問題その1)

弁理士・知的財産翻訳検定試験委員 藤岡隆浩
シリーズ「特許法の国際比較」

特許権取得後において、継続出願や分割出願がない場合についてお話しします。日本の特許制度では、特許後の権利範囲は、訂正審判によって変更することができます。しかし、訂正審判では、特許後に権利範囲の拡張や変更ができません。訂正審判では、権利範囲を狭くすることだけが可能です。
したがいまして、特許権を監視する側としては、特に関連出願が日本の特許庁に継続していなければ、特許時の権利範囲に製品が含まれていなければ一安心です。

しかし、米国では、この考え方は通用しません。米国は、日本の訂正審判制度に近似する制度として再発行制度(Reissue)を有しています。この再発行制度は、特許発行から2年以内に限って権利範囲の拡張を認めているからです。

米国出願における再発行実務の一例
米国出願における再発行実務の一例

さらに、再発行制度は、特許出願手続きと同様の手続きで、しかも優先的に審査が行われ、継続出願や分割出願も可能です。

一方、競業者から権利行使を受けた際には、自社の特許の権利範囲にその競業者の製品が含まれているか否かだけでは無く、再発行によって権利範囲内とすることができるか否かについて検討することも有益です。

藤岡隆浩

弁理士・知的財産翻訳検定試験委員
日本弁理士会 欧州部長および国際政策研究部長を歴任