第4回サントリーがアサヒのドライゼロを特許侵害と主張
今週の特許ニュースといえばこれです。とうとうノンアルコールビール特許の紛争が起こりました。サントリーホールディングス(株)(サントリービールの親会社)がアサヒビールを特許侵害で訴えました。今年1月に訴訟が提起されていたとのことです。アサヒビールのドライゼロというノンアルコールビールが、サントリーが2013年10月に取得したある特許を侵害しているというのです。アサヒはこの特許が無効であると考えており、両者は話し合ったが交渉は決裂しており、訴訟に及んだものです。
アサヒグループホールディングスのニュースリリース「サントリーホールディングス(株)の当社に対する訴訟の提起に関するお知らせ」(2015年3月10日付け)をご覧下さい。
http://www.asahigroup-holdings.com/news/2015/0310.html
このニュースリリースによると、サントリーホールディングス(株)の「pHを調整した低エキス分のビールテイスト飲料」(特許5382754号)の特許権侵害として訴訟が提起されています。この特許の請求項1は、
「【請求項1】
エキス分の総量が0.5重量%以上2.0重量%以下であるビールテイスト飲料であって、pHが3.0以上4.5以下であり、糖質の含量が0.5g/100ml以下である、前記飲料。」
となっています。
しかもこの特許は、国際出願(WO2013/077292)された日本特許(5314220号)の分割出願であることがわかりました。EPO(欧州特許庁)やオーストラリア、韓国、ロシアにも国内移行されています。つまりこの飲料は世界的に特許を取ろうとしているのですね。
明細書を読むと、エキス総量の低い飲料ではpHの範囲を調整することにより、飲みごたえ感が出て、酸味も付与されるとのことです。つまりエキス総量と糖質含量、pHの範囲を特定したことがこの発明の特徴です。
アサヒビールは一貫してこの特許が無効だと主張しており、争う意向です。この訴訟では、特許の侵害かどうかもさることながら、このような数値限定した特許が進歩性があるかどうかが争点となり、ここに関心が集まるでしょう。
This is the greatest patent news of the week. At last, a dispute of alcohol-free beer patent occurred. Suntory Holdings Limited reportedly filed a lawsuit against ASAHI BREWERIES, LTD. in January 2015, claiming that Asahi's “DRY ZERO" beer is infringing Suntory's patent right (issued in October 2013). Asahi thinks that this patent includes grounds for invalidation and both parties negotiated unsuccessfully, which led to this lawsuit.
For details, see Asahi Group Holding's News Release titled “Announcement of the lawsuit filed by Suntory Holdings Limited against our company".
http://www.asahigroup-holdings.com/news/2015/0310.html
According to this news release, the lawsuit was filed, claiming that Suntory Holding's patent No. 5382754 titled “pH-adjusted beer taste beverage with low extract content" was infringed.
Claim 1 of this patent recites,
“[Claim 1]
A beer taste beverage having total amount of extract components of 0.5 percent by weight or more to 2.0 percent by weight or less, a PH of 3.0 or more to 4.5 or less, and sugar content of 0.5g/100ml or less".
This patent is a divisional application of the Japanese patent No. 5314220 filed as the International Application (International Publication No. WO2013/077292) that had entered national phases in EPO, Australia, Korea, and Russia. Namely this beverage patent application was filed to obtain patents in foreign countries.
According to the patent specification, beverages having low extracted components but adjusted pH range provide good taste and adds acidic flavor.
Asahi Beer is consistently insisting that this patent includes grounds for invalidation. In this lawsuit, not only is the focus on whether the patent is infringed or not but also whether such patent in which the specified numerical range has an inventive step or not will be the focal points of issue and attract interests of people.
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
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