第10回Googleの特許購入プログラム
GoogleがAnnouncing Patent Promotion ProgramをPublic Policy Blogで発表しました(http://googlepublicpolicy.blogspot.jp/2015/04/announcing-patent-purchase-promotion.html)。
5/8〜5/22にGoogleが特許の買い取りを受け付けるというプログラムです。特許保有者が設定した価格で特許売却をGoogleに申し出ます。もちろんすべてが受けいれられる訳ではなく、6/26までに結果が知らされます。
このプログラムはパテントトロールに特許を売却してしまわないように、との趣旨です。パテントトロールとは、特許を侵害していそうな企業を見つけては、警告状を送りつける者です。
上記記事には、"friction"ということばが使われています。このプログラムを通してGoogleは特許のマーケットプレースからfrictionを排除しようとしています。ここでいうfrictionの意味は何でしょう? 特許売却をめぐる販売者と購入者の合意の不一致であると私は考えます。このような不一致が起こるからこそ、パテントトロールのような好ましくない者に特許を売却する羽目になってしまうのでしょう。パテントトロールに売却すること自体がfrictionかも知れません。
特許を持っていても、それを売るなんで、大それている、手続きが大変そう、という印象を持ちますが、そうであればGoogleに売却しよう、とこのプログラムを利用すればよいのです。
パテントトロールに売却してしまうことのないように。
Googleに特許を売却なんて、大企業が行うニュースの世界でのはなしと思っていましたが、個人も手軽に行えるプログラムです。
しかしGoogleはこのプロジェクトはexperimentであることを強調しています。ということは今後、本格的にこのようなプロジェクトが開始されることが期待できますね。
Google issued “Announcing Patent Promotion Program" (http://googlepublicpolicy.blogspot.jp/2015/04/announcing-patent-purchase-promotion.html)in its Public Policy Blog.
This is a program for accepting purchase of patents between May 8 and May 22. A patent holder offers for sale of patent at a price set by himself/herself. Of course, all offers are not accepted, and results will be notified by June 26.
This program intends to prevent patent owners from selling their patents to patent trolls. A patent troll is a person who finds a company which appears to be infringing a patent right and sends a written warning.
The above-described article uses the term “friction". Through this program, Google intends to eliminate frictions from the marketplace. What is this “friction"? I think what “friction" means here is disagreement of intention between a purchaser and a seller in a sale of a patent. Such disagreement results in selling patents to undesirable persons like patent trolls. Selling patents to patent trolls may be in itself a friction.
Selling a patent to Google leaves a daring impression and appears to incur troublesome procedure, but using this program will save them, in order to avoid selling a patent to a patent troll.
Selling a patent to Google sounds like stories and news in a world of large corporations, but an individual can actually easily sell patents using this program.
Google, however, emphasizes that this project is an experiment, which also means that we can have high expectations for such programs to formally start in the near future.
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
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