第13回日米協働調査
特許の国際関係の動きが活発です。毎日のように日本特許庁と外国との協力のニュースが聞こえてきます。これからは中国出願と考え、中国語を勉強する弁理士が増えてきました。私もその一人です。
パテントトロールの影響でかげりを見せていたアメリカ特許業界ですが、日米共同という形であればお互いに助け合って、日米相互間の出願という形で双方が今後、互いに伸びていくことができるでしょう。
私が弁理士になったのは日米特許摩擦の真っ只中、つまり1980年代後半です。こんなことばもあまり使われなくなりましたが、アメリカは特許では手ごわい国、という印象を持って特許の仕事をしてきました。
しかし30年近く経過した今では、日本の個人発明家がAppleに勝訴するなど、アメリカが圧倒的に強かった時代とは様相がだいぶ変わっています。このような時代だからこそ、日米は協力すべきです。
これだけが理由ではないのでしょうが、2015年8月より日米が審査協力することとなりました。
経済産業省ウエブサイト「世界で初めて米国との間で特許審査の協働調査を開始します〜日米両国での早期かつ同時期の特許権の取得が可能に〜」(http://www.meti.go.jp/press/2015/05/20150521001/20150521001.html)をご覧ください。
「日米協働調査」が行われ、両国は別個のサーチをするのですが、調査結果を共有します。この協働調査試行プログラムへの参加申請から約6ヶ月で出願人に審査結果を送付することを目標とします。
特許が国際関係抜きでは考えられないというのは以前からですが、国際の意味が、今後は摩擦ではなく協力の方向にいくのでしょう。
There are active movements in international relations for patents. Almost every day, news of cooperation between Japan Patent Office (JPO) and foreign offices are reported. As increase in Chinese applications will be expected, patent attorneys are studying Chinese. I am one of them.
The U.S. patent world has been weakened due to existence of patent trolls, but Japan and U.S. cooperate in increasing patent applications between them.
I became a patent attorney in the middle of Japan-U.S. patent friction, in the late 1980s and I have been doing patent works bearing in mind that U.S. is a tough country for patents, but such words are no longer commonly used.
About 30 years have passed, and circumstances where U.S. was overwhelmingly tough have drastically changed, for example, the Japanese non-corporate inventor won against Apple in the patent litigation.
Under such circumstances, Japan and U.S. should cooperate with each other.
Japan and U.S. decided to cooperate in conducting searches as from August 2015.
For details, see Ministry of Trade, Industry and Economy website “Starting Cooperative Patent Search with U.S. firstly in the world –Early and Simultaneous Obtainment of Patent Right between Japan and U.S. will be available-“
(http://www.meti.go.jp/press/2015/05/20150521001/20150521001.html)
“Japan and U.S. Cooperative Search" will be conducted. They will conduct searches separately, but share search results, aiming at sending search results to an applicant in about six months from application for participation in this cooperative search trial program.
Patents have not been discussed without reminding of international relations, but “international" will relate to cooperation without relating to “friction".
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
- だれでも弁理士になれる本
- 改正・米国特許法のポイント
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