第56回フランク三浦とFRANCK MULLER
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
FRANCK MULLERという時計の世界的ブランドに似て非なる「フランク三浦」の商標が特許庁の審判では無効とされたが、知財高裁で覆り、類似していないと判断されたことが大きなニュースになっています。
フランク三浦(ただし、「浦」の右肩の点「、」がありません)
FRACNK MULLER
似ているでしょうか?見た目、つまり外観は全く類似していないこと、そして日本の名前を含む商標と高級ブランドとでは観念も類似しないことが、今回の判断の根拠となりました。
商標は外観、称呼、観念の3つのうち一つでも類似していれば全体として類似する、という原則は今回適用されず、3つのうち一つが類似でも他の2つが著しく異なれば非類似になることがこの判例で確認されました。
またFRANCK MULLERがあまりにも有名であることが「フランク三浦」側には幸いしました。あまりに高級ブランドだから消費者は誤認、混同しないという判断です。
ネット上(Yahoo! 知恵袋)でも両者は別人の商品であること前提の発言がある、という事実も判断の根拠にされました。ネット時代ならではのことです。
The trademark “Frank Miura," which is similar but different to the world famous watch brand “FRANCK MULLER," was invalidated in a trial case at JPO,; however, the judgment was reversed at the Intellectual Property High Court, and it was found as dissimilar, which attracted attention.
フランク三浦 (「、」 at the right shoulder is deleted)
FRANCK MULLER
Are these trademarks similar?
They are dissimilar in appearance, and the meaning is also different because “フランク三浦" includes a Japanese name while “FRANCK MULLER" is a world-famous brand.
The principle that trademarks are similar as a whole if any of the appearance, pronunciation and meaning are similar was not used this time, but the principle that trademarks are dissimilar as a whole if two of these three elements are remarkably dissimilar even if one of them is similar was used this time.
As for the likelihood of confusion, “FRANCK MULLER" is so renowned, which led to the conclusion that “Frank Miura" will not cause confusion with “FRANCK MULLER", which is a conclusion that is lucky for Frank Miura.
On the Internet, some statements on the premise that both are different persons' trademarks (Yahoo! Answers) were the basis for this finding, which is unique to the Internet age.
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
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