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翻訳コラム

COLUMN

第64回職務発明の対価基準のアクセス

2016.06.23
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子

前回のブログから職務発明の規定について伝えています。今年4月から新しい職務発明の規定が施行されています。
今回の改正は会社に最初から職務発明が帰属することがあると定めていますが、その他に大きな意味があるのは、相当の利益に関する指針が経済産業省令として定められ、これが公表されたことです(下記参照)。

翻訳

In my previous blog, I informed you about the new provision for employees' inventions that was enforced this April.
A new patent law provides that an employee's invention may belong to an inventor (an employee) but what is more significant in this amendment of the Patent Law is that the Guideline for reasonable economic benefits was provided by the Ministry of Economy, Trade and Industry, which has been already published (see below).

「特許法第35条第6項に基づく発明を奨励するための相当の金銭その他の経済上の利益について定める場合に考慮すべき使用者等と従業者等との間で行われる協議の状況等に関する指針」(経済産業省告示 第131号(平成28年4月22日))
(https://www.jpo.go.jp/seido/shokumu/files/shokumu_guideline/guideline_02.pdf)
職務発明の特許を受ける権利については、最終的に従業者→会社に移転するとしていた企業は多く、改正前後で実はそれほど大きな差異はないのですが、指針がきちん公表されたことに意味があります。
この指針には、相当の利益(特許法35条6項)を決める基準を公表する方法まで具体的に規定されています。
イントラネット、電子メール、社内報、インターネット上のウエブサイトで公表する
などが例として挙がっており(「第二適正な手続」、「三開示について」「2開示の方法」(4)(5)、第19ページ、第2〜10行目)、
「従業者等が基準を見ようと思えば見られるような措置 」というフレーズが記載されています(同指針の第18ページ、11行目)。
基準は内容もさることながら、これにアクセスできる時間が短いことが重要だと思います。上記経済産業省令へのアクセスもわかりやすく、さらに企業内での相当の対価の基準開示もわかりやすくすべきことが定められています。基準の内容に不服を述べるにしても、アクセス方法がわかりにくければ、不服を控えてしまうからです。

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Rights to obtain patents for employees' inventions had been mostly assigned to companies from inventors, which is not actually a big change before and after the amendment. What is more important is that the Guideline for reasonable economic benefits was definitely established and published.

This Guideline specifically provides methods of disclosing the standard for deciding reasonable economic benefits under Article 35 (6) of the Patent Law through an intranet, email in-house magazine, website on the Internet, etc. (“No. 2 Due Process", “3. Disclosure", “(4), (5) of “2 Methods of Disclosure", page 19, lines 2 to 10 of the same Guideline), and includes the phrase “measures for enabling employees, etc., to see the standard wherever they want to see the standard" (page 18, line 11 of the same Guideline).
A standard is significant in not only its contents but also in the time to access the standard. The aforementioned Guideline is easily accessible and also provides that the in-house standard for reasonable benefits shall be easily accessible. If employees are not satisfied with the contents of the standard, they will hesitate to express their satisfaction if the method to access the standard is difficult.

奥田百子

東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)

著書

  • もう知らないではすまされない著作権
  • ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
  • 特許翻訳のテクニック
  • なるほど図解著作権法のしくみ
  • 国際特許出願マニュアル
  • なるほど図解商標法のしくみ
  • なるほど図解特許法のしくみ
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