第67回翻訳をしていて訳語 「自社」
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
翻訳をしていて訳語に困る単語がいくつかあります。その一つのが「自社」です。自社開発の技術、自社の特許など様々なフレーズで使われましが、この自社をどう訳したらよいかは非常にいつも困ります。
自社とは誰の自社なのか、ということです。これがわかれば訳は簡単です。貴方に向けて書いている文章であれば、your company, your own companyです。しかし相手を特定せず、抽象的な誰かの自社であれば、one's own companyと訳しています。
誰かの自社であることを強調せずに、単にある会社の特許を意味するのであれば、a company's patentです。
「社内」の訳はin-houseです。社内弁護士はin-house counselと訳します。
ということは、house には会社という意味があるのでしょうか。houseは会社を直接意味するのではなく、建物という意味があります。家であろうが会社であろうが建物の中であれば社内なのでしょう。
笑い話があります。翻訳業界では「インハウスの翻訳者」(社内翻訳者)ということばがありますが、これを在宅翻訳者と勘違いした人がいます。しかしhouseが建物を意味するのであれば、確かに在宅翻訳者でも間違いではないですね。
Some words are difficult for me to translate. “One's company" (“Jisha" in Japanese) is one example, and is used in many phrases such as technology developed by one's company or one's company patents. How to translate this phrase (Jisha) into English always annoys me.
Who's company is “one's company"? If this is clear, translation is easy. If “one's company" is used in sentences addressed to you, “one's company" means “your company" or “your own company". If “one's company" is used in sentences addressed to unspecific persons, and “one's company" is an abstract person's company, it can be translated into “one's own company".
If a certain company's patents are merely meant without stressing somebody's company's patents, this phrase is translated into “a company's patents"
The term “in company" is translated into “in-house". A counsel in a company is translated into “an in-house counsel".
I wonder if this means that “house" means “company"? The term “house" does not directly mean a company but means a building. The phrase “in-house" means “in a building" whether a building is a house or a company.
There is a funny story. In the translation industry, there is the expression “in-house translator" (which means “translators in a company"), which was misunderstood as at-home translators. However, if a house means a building, understanding “in-house translators" as “translators at home" is not a mistake.
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
- だれでも弁理士になれる本
- 改正・米国特許法のポイント
バックナンバー
- 第294回2021.05.27
ファーストリテイリングがアスタリスクの特許を無効としようとしたが、知財高裁で敗訴 - 第293回2021.05.20
コロナワクチンの特許放棄の問題 - 第292回2021.05.13
「ステーキ宮のタレ」のレシピを掲載したことが話題 - 第291回2021.05.06
「お風呂が沸きました」のメロディーが音商標登録 - 第290回2021.04.29
炊飯をつくる方法特許 - 第289回2021.04.22
イオンが「ジャスコ」商標を出願 - 第288回2021.04.15
特許庁から漫画の審査基準が発行されました - 第287回2021.04.08
音楽教室訴訟が最高裁に上告される - 第286回2021.04.01
音楽教室での演奏に著作権使用料発生?の判決 - 第285回2021.03.25
ドトールから考えるブランドの高級感