第75回クレームの「であって」と「において」
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
クレームの記載で「〜であって、〜を特徴とする広告配信方法」、「〜において、〜を特徴とする広告配信方法」のように記載します。「〜であって」と「〜において」ということばが使われます。この2つは違うのでしょうか?
特許以外の通常の文章では、「〜であって」は、たとえば「オンラインストレージであって、いつでもどこでもファイルを保存できるもの」のように、ほぼイコールの意味で使われます。
これに対し「〜において」は、「ヴァーチャルに仕事をする現代社会において、オンラインストレージは重要である」のように、場所や環境に付されることばです。
このように意味の異なることばがなぜクレームでは同様の場面で使われるのでしょうか?
否。クレームでもこの2つは異なるニュアンスを出す場面で使われることがあります。
「属性に応じた広告を配信する広告配信手段であって、送信手段と、受信手段と、広告配信手段と、課金手段とを備える広告配信方法において、前記広告配信手段は、〜である方法。」
このように、発明の特徴をいったん述べて、「であって」で繋いで、次に構成要件を述べ、「そのような発明の中で」を意味することばとして「において」を使うことがあります。
この場合の「であって」は以下の構成要件を有する(comprising)と置き、あえて「であって」を訳しません。
これに対し「において」は、whereinやin whichと訳します。
このように、類似の意味に思える「であって」と「において」をクレーム中で巧みに使い分けることがあります。
Patents often use “deatte" or “nioite" in Japanese claims to distinguish “advertisement distribution methods“. What is difference between “deatte" and “nioite"?
In ordinary documents other than patent documents, “deatte" in Japanese is used almost exactly like the English meaning for equal. For example: “An online storage which can store files anytime and everywhere".
On the other hand, “nioite" in Japanese is attached to words for places or environments, for example: “In a modern society in where we work virtually, online storage is important".
Can these words with different meanings be used at the same place in these claims?
No they can't. Within these claims, these two words are being used with different nuances.
“An advertisement distribution method of distributing advertisement depending upon attributes comprising: a transmitter, a receiver, advertisement distribution means and accounting means, wherein the advertisement distribution means …"
In this sentence, the characteristics of an invention are stated once. These characteristics relate to the components of the invention by use of the word “deatte". “Nioite" is used to mean “in such an invention". In this case, “deatte" is replaced by “comprising" but it is not intentionally translated, while “nioite" is translated as “wherein" or “in which".
Thus “deatte" and “nioite" which appear to have a similar meaning may be effectively used in different ways in patent claims.
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
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