第76回ジェプソンタイプのクレーム、wherein, characterized in that
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
ジェプソンタイプのクレームは、「〜であって、〜を特徴とする装置」という形式のクレームであり、「〜であって」の部分(前提部分)と、「〜を特徴とする」という部分(特徴部分)から構成されます。前提部分は先行技術を記載するので新規性がない、ということがよくいわれます。しかし本当にそうでしょうか。
「〜であって」は、特徴部分が非常に長いときに、「半導体製造装置であって」と最初に発明を簡潔に述べて、一息つく目的で用いられることが多く、必ずしも前提部分に従来技術を記載するわけではありません。
前提部分が発明の特徴を最初に述べるのであれば、この部分は先行技術にはならないはずです。
ところで、「〜であって」の訳語は米国特許のクレームではwherein, 欧州特許のクレームではcharacterized in thatであるといわれます。しかしこれもこのように明確に定まっているわけではなく、米国特許のクレームでもcharacterized in thatという表現を見かけます。「〜を特徴とする」の訳語としてはcharacterized in thatの方がcharacterizeという単語の意味から考えて適切です。whereinは「〜であって」の訳語であると思われます。「であって」は前回のブログでも述べたように、nearly equalを意味します。したがってwhereinはwhich isに置き換えられることばであり、「であって」の訳語です。
したがってあえて「特徴とする」を英訳に入れたいのであれば、whereinと共にcharacterized in thatを英訳に入れるべきと考えます。
A Jepson-type claim uses specific sentence structuring which consists of two distinct phrases: a preface where the Japanese word “deatte" is firstly used, followed by “tokuchoutosuru", which is a Japanese word used to denote the characteristics of a thing. For example: “A semiconductor device wherein (“deatte") …" It is frequently said that the preface has no novelty because it recites the prior art. I wonder if this is true?
The word “deatte" (wherein) is frequently used for describing an invention in brief at first so as to pause if the characteristics part is very long. Take for example the following: “A semiconductor device, wherein … “, notice here that the preface statement does not always recite the prior art.
If the preface statement recites characteristics of the invention at first, then the preface statement should not necessarily recite the prior art.
It is said that “deatte" is translated as “wherein" in U.S. patent claims, and “characterized in that" in European patent claims, which is not, however, clearly defined. Actually, the phrase “characterized in that" is found in U.S. patent claims. The word “tokuchoutosuru" in Japanese is suitably translated as “characterize in that" in light of the meaning of the word “characterize". The word “wherein" seems to be a translation of “deatte". The word “deatte" means “nearly equal" as was stated in the previous blog. The word “wherein" is replaced by “which is" and is a translation of “deatte".
Accordingly, if the word “tokuchoutosuru" is intentionally translated into English, “characterized in that" should be stated together with “wherein".
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
- だれでも弁理士になれる本
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