第80回TPPによる著作権改正
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
TPPが大筋で合意されたことに伴い、平成28年3月に「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案」が国会に提出されました。TPP(環太平洋パートナーシップ)ではモノだけでなくサービス、投資の自由な流通を目指しており、知的財産を含む多くの分野でのルール作りがなされます。
知的財産法の一つである著作権法も改正されることとなりました。数回にわたり著作権法改正について説明します。
以前から議論されていた著作権保護期間は50年から70年となります。著作者の死後70年ですから、あまりに長い期間の著作権が認められます。
つぎに著作権侵害の一部が非親告罪となります。非親告罪とは告訴がなくても公訴が提起される罪です。著作物の複製はこれまで親告罪でした。
非親告罪となる著作権侵害行為の典型例は、ビデオやCD、漫画の海賊版をリアルな世界で販売したり、ネット上で販売する行為です。もちろんこれらは著作権者以外の者が不当な利益を得る目的で行う場合です。
新しい条文には、非親告罪とすることの要件につき、「著作権者の利益を害すること」「原作のまま複製された有償著作物の複製物を公衆に販売すること、原作を公衆送信すること」「著作権者の利益が不当に害されたこと」が規定されています。これらの文言から海賊版の行為であることが読み取れます。
著作権法改正は他にもあります。次回以降紹介します。
なお、改正著作権法が効力を有するのは、TPPが我が国で効力を有する日です。
The Trans-Pacific Partnership (TPP) has been tentatively agreed upon, and therefore, “bills for the establishment of relevant laws relating to the execution of the Trans-Pacific Partnership agreement" was submitted to the Japanese Diet in March 2016.TPP aims for the free trade of services, investments, and products, and will thus make rules concerning a wide range of fields including Intellectual Property.
A particular copyright law concerning Intellectual Property shall be amended under the agreement, and this will be further touched upon in this blog several times from now on.
This copyright law, which had been discussed before, has been amended so that the rights of authors shall extended from the current 50 years to 70 years upon the death of the author, which appears to be a very long time.
According to this amendment, copyright infringement acts will become offenses for which prosecution may be proposed only if an accusation is filed.
Typical infringement acts include selling pirated editions of videos, CDs, or comics etc. to the public in the physical world or over the internet; all of which is of course performed by non copyright holders under the motive of obtaining unlawful profits.
The new Copyright Law provides three requirements for such offences: “the purpose of violating copyright holder profits", “selling a copy of a purchased original work to the public or electronically transmitting an original to the public", and “unjustly violating copyright holder profits". This is the wording that defines the acts of piracy.
Other Copyright Law amendments will be introduced in the next blog.
These Copyright Laws shall be made effective in Japan on the same day that TPP is enforced in Japan.
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
- だれでも弁理士になれる本
- 改正・米国特許法のポイント
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