第84回技術的利用制限手段
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
TPP合意に伴う著作権法改正で「技術的利用制限手段」という概念が著作権法に入りました。この具体例としては、B-CASカードを改造して放送を不正視聴する行為があります。
技術的保護手段(コピープロテクション)回避が著作権侵害になることはすでに規定されています。これは著作物のコピー防止手段であるのに対し、技術的利用制限手段はその名の通り、著作物を利用することを制限する手段(アクセスコントロール)であり、これを回避することも著作権侵害とみなされることが規定されました。
条文を見ると、アクセスコントロールには以下の2方式があります。
- 著作物の視聴に用いられる機器が特定の反応をする信号を音又は影像と共に記録し又は送信する方式
- この機器が特定の変換を必要とするよう音または影像を変換して、記録し又は送信する方式
つまり1.信号を記録、送信する方式と、2.音や映像を変換して記録、送信する方式があります。
そして「著作物の視聴を制限する手段」であることが規定されています。暗号化された信号を解除して不正に視聴する行為が侵害とみなされるようになります。
The TPP agreement will introduce the concept of “technical utilization restriction measures" in its new copyright law amendments. Such measures include modifying B-CAS-cards to illegally view broadcasts.
Under the present copyright laws avoidance of technical protection measures (copy protection) shall be regarded as copyright infringement. While this is a way to prevent copying, technical utilization restriction measures, as the name suggests, is a means to restrict the utilization of copyrighted works (access control). Avoiding the access control would be akin to copyright infringement under the new Copyright Law.
The text provides two ways for access control.
- Using a machine used for viewing copyrighted works that responds to certain audio and/or video signals and records or transmits them.
- Converting the audio and video that needs to be specifically converted by the said machine, then recording or transmitting it.
In other words, the first method is a method for recording and transmitting signals and the second is a method for transmitting converted sounds and/or images.
The new copyright laws are “measures for restricting the viewing of copyrighted works". Breaking encryption signals for the purpose of unlawfully viewing something shall be regarded as copyright infringement.
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
- だれでも弁理士になれる本
- 改正・米国特許法のポイント
バックナンバー
- 第294回2021.05.27
ファーストリテイリングがアスタリスクの特許を無効としようとしたが、知財高裁で敗訴 - 第293回2021.05.20
コロナワクチンの特許放棄の問題 - 第292回2021.05.13
「ステーキ宮のタレ」のレシピを掲載したことが話題 - 第291回2021.05.06
「お風呂が沸きました」のメロディーが音商標登録 - 第290回2021.04.29
炊飯をつくる方法特許 - 第289回2021.04.22
イオンが「ジャスコ」商標を出願 - 第288回2021.04.15
特許庁から漫画の審査基準が発行されました - 第287回2021.04.08
音楽教室訴訟が最高裁に上告される - 第286回2021.04.01
音楽教室での演奏に著作権使用料発生?の判決 - 第285回2021.03.25
ドトールから考えるブランドの高級感