第88回懐かしのピンク・レディーに関するパブリシティ権の判例です
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
懐かしのピンク・レディーに関するパブリシティ権の判例です。女性デュオ音楽グループであるピンク・レディーの踊りに合わせてダイエットをするという特集が雑誌に組まれ、ピンク・レディーの当時のステージ写真などが掲載されました。
写真の撮影については彼らの同意を得たものでしたが、雑誌に掲載することの同意は得られていませんでした。
これがパブリシティ権を侵害するかどうか争われました。パブリシティ権とは顧客を吸引する権利と表現できます。つまり有名人はその肖像が顧客を吸引する力を持っているため、これを商品に添付することで商品が売れるようになる、これは経済的利益に相当し、肖像を無断で使用されるとパブリシティ権の侵害になります。
ピンク・レディーの判例でもこの雑誌がピンク・レディーの顧客吸引力に着目して、これを利用したものかどうかが判断されました。
しかしこの雑誌記事はピンク・レディーの踊りに合わせてダイエットするという内容であり、彼らの写真はダイエットの説明の補足として、そして読者に当時の彼らを思い出させる目的で使用されており、顧客吸引力を利用したものではないという判断でした(最高裁H24.2.2)。
彼らの写真を掲載して雑誌を売れるようにした訳ではないということです。
Feeling a little nostalgic, I decided to write about a supreme court decision from some time ago concerning the publicity rights of the female duo music group Pink Lady. At the time, a special edition magazine article featuring Pink Lady had talked about dieting via dancing, which was published with on stage photos of Pink Lady. The photos were taken with their consent, but the photos were used in the magazine without their consent.
As such, disputes over whether the above event actually infringed upon their publicity rights or not occurred. This is because publicity rights can be expressed as the right to take in consumers. In other words, because famous people possess the ability to draw in consumers, associating them with products can lead to sales. This is equivalent to an economic benefit, and as such using the portraits of famous people without their authorization would infringe upon their publicity rights.
In the Pink Lady case, it had to be determined if this magazine focused on Pink Lady's ability to attract consumers and then utilized this ability or not.
It was, however, judged that the article in this magazine featured going on a diet while dancing like Pink Lady, and therefore their photos were placed as a supplementary explanation for a diet. Upon recalling their goals at the time, it was determined that the authors were not using the pictures as a feature to attract consumers. (This was decided by the Supreme Court on February 2, 2012).
In short, their photos were not used for boosting the sales of the magazine.
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
- だれでも弁理士になれる本
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