第90回TPPによる新特許法で延長される期間
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
前回のブログでTPP協定による新特許法で、特許権の存続期間の延長がされることを述べました。審査に時間がかかり、特許権の設定登録が遅くなった場合です。
延長される期間の長さについても規定があります。
特許出願日から5年
または
出願審査請求日から3年
のいずれか遅い日以後に特許権設定登録された場合に、延長の出願ができます。
これは審査に長期間を要したことを示すからです。
特許出願日から5年経過日
または
出願審査請求日から3年経過日
のいずれか遅い日(基準日といいます)
延長できる期間は、以下の延長可能期間を超えない期間です。
延長可能期間=
(基準日〜特許権設定登録の期間)-特許法により通知、命令があり、手続を執るべきことを命じられた場合、通知、命令があった日から手続が執られた日までの期間です。
ただし、拒絶理由通知に対する意見書提出期間や同日に同一の出願が競合した場合の協議結果を届け出る期間は差し引かれません。
つまり、出願人が通知、命令に応答するまでの期間は存続期間からマイナスされてしまうということです。
この規定はまだまだ続きがあります。次回以降説明します。
As was explained in the previous blog, under the amended patent laws due to the TPP (Trans-Pacific Partnership) agreement, a patent's validation period may be extended if considerable time was taken to examine the patent, or if it was registered late. There are however some requirements regarding the length of the validation term's extension. The patent's validation term may be extended based on whichever of the following have a later extension date:
- 5 years from the patent application date
- 3 years from the date in which the examination was requested
This is again because the examination period took longer than the predetermined time and therefore a term extension was merited. Which ever date happens to be the later date is referred to as the “standard date."
The extended term must equal a time period that spans from the standard date to the established period in which the patent right was registered. In such cases where special orders or notifications were given towards the patent, thus inadvertently making the term longer, all the time it took to fulfil such orders are subtracted from the over all time span noted above.
However, the term is not increased when filing an argument in response to a notice of reason for refusal, and it is also not increased when reporting a consultation result if the same applications are filed on the same date.
This means that the term for applicants to respond to notices or orders shall be subtracted from the extended term. The extended term is further provided in the new patent laws, which will be explained in the blogs to follow.
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
- だれでも弁理士になれる本
- 改正・米国特許法のポイント
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