第97回マリカー
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
数か月前に異議の決定が出たのですが、「マリカー」の事件です。街を派手なコスチュームを着て走るゴーカートです。株式会社マリカーという会社があり、「マリカー」という商標(5,860,284号)を「自動車」等に登録しましたが、この商標に対し、任天堂から異議申し立てがされました。任天堂の著名なレーシングゲーム、そして商標「マリオカート」の略称であるという理由です。任天堂は「MARIO KARTマリオカート」(4,222,218号)という登録商標を「家庭用ビデオゲーム機」等に有しています。
このとき主張された根拠条文は商標法4条1項15号、19号です。
4条1項15号は、他人の業務と出所混同を生じさせる商標は拒絶される、
4条1項19号は他人の業務にかかる著名な商標と同一又は類似の商標であって、不正目的で使用する商標は拒絶される。
特許庁では(株)マリカーの「マリカー」商標はこのいずれにも該当しないとして、この商標は維持されました。
「マリカー」は著名なレーシングゲーム「マリオカート」の略称ではないと判断されたからです。そうなると、
「マリカー」と、
「マリオカート」
が類似かどうかの問題になります。類似であれば出所混同を生じさせるからです。しかしこの2つは類似ではないですね。
「マリカー」が「マリオカート」の著名な略称ではないと判断されたことが、この結論を招いてしまいました。
ここで注意すべきは、「マリオカート」というゲームは十分著名であるが、「マリカー」に省略されることが著名ではないということです。
4条1項15号は非類似でも具体的に出所の混同が生じている場合に適用されますが、この事件では、「マリカー」と略されることが著名ではなかったので、類似による一般的出所の混同が生じているか否か、が判断された面白いケースです(異議2016-900309号)。
Today's blog brings us into the world of Nintendo! Perhaps you heard about the lawsuit a few months ago concerning the MariCAR company? MariCAR is a company that allows customers to race around the streets of Tokyo in a go-cart wearing a gaudy (Nintendo character) costume. MariCAR Inc. registered the trademark Marika (マリカー) in Japanese Katakana under the “vehicle" registration heading; (No. 5,860,284) but Nintendo objected the registration, citing that it was an abbreviation of their famous trademark, Mario Kart (マリオカート in Katakana) from the popular racing game. Incidentally, Nintendo filed their trademark “MARIO KART マりオカート“ (No. 4,222,218) under the heading “consumer game machine".
The following articles from the trademark acts were argued as grounds for their objection: article 4, item 1(15) provides that a trademark causing confusion with other persons' business shall be rejected. Article 4, item 1(19) provides that a trademark which is identical to or similar to other person's famous trademark that is used for illegal purposes shall be rejected.
The JPO decided that the Marika trademark from MariCAR Inc. did not count as a trademark that needed to be refused according to article 4, item 1 (15)(19), and they maintained this trademark, on the grounds that Marika (マリカー) is not an abbreviation of the famous racing game Mario Kart (マリオカート). Accordingly, There is a potential problem if the Japanese for Marika is similar to the Japanese for Mario Kart because if Marika is similar to Mario Kart, confusion may arise. However, these trademarks are not similar, as the decision that Marika is not a famous abbreviation of Mario Kart led to this conclusion.
Please bear in mind that it was judged that the game MARIO KART is very famous, but abbreviating the game's name to MARIKA was unheard of. Article 4, item 1(15) may apply to any trademark that is not similar to a famous trademark but that still may cause concrete confusion between the two. This was an interesting case in which two trademarks that (may or may not have been) similar needed to be judged to determine if a general confusion may have arisen because certain abbreviations (may or may not have been) famous (Objection No. 2016-900309).
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
- だれでも弁理士になれる本
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