第126回下位概念への補正
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
「上位概念」「下位概念」ということばは、特許の世界では特に「クレームを上位(下位)概念に補正した場合は、新規事項の追加になるか」というシーンでよく使われます。
「特許・実用新案審査基準」(特許庁)の「第IV部 第2章 新規事項を追加する補正」第5〜6頁では、
「ワーク」→「矩形ワーク」の補正が新規事項の追加にはならないことが記載されています。クレームの文言の下位概念への補正の例です。明細書には正方形のみのワークの例が記載されているという前提です。このとき、
「ワーク」→「正方形ワーク」
の補正はもちろん新規事項の追加にはなりませんが、
「ワーク」→「矩形ワーク」
の補正も新規事項の追加になりません。
ワークはここではコーティングされる対象のガラス基板を意味します。技術常識からいえばガラス基板は矩形(長方形)であるため、このような技術常識を述べた下位概念に補正することは新規事項の追加になりません。
In the realm of patenting, the words “generic concept" and “specific concept" are often used specifically when we discuss whether “amending a word in the claims to its generic (or specific) concept adds new matter into the claims."
Pages 5 to 6 of Part IV, Chapter 2 “Amendment Adding New Matter" of the “Examination Guidelines for Patent and Utility Model in Japan" (JPO) describe an example of amending a word in the claims to its specific concept, on the premise that the only work piece example provided in the specification is a square work piece. The Guidelines state that amendment from the term “work piece" to “square work piece" does not add new matter into the claims. Additionally, amendment from the term “work piece" to “rectangular work piece" does not add new matter either.
In this specific case, the “work piece" refers to a glass plate to be coated. Because glass plates are typically rectangular (from a technical point of view), amendment from the term “work piece" to “rectangular work piece" simply states common technical knowledge, and therefore does not add new matter into the claims.
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
- だれでも弁理士になれる本
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