第145回【改訂】梅ヶ枝餅の商標侵害事件
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
「梅ヶ枝餅」は太宰部天満宮の名物である餅菓子です。この商標をめぐる事件です。
「梅ヶ枝餅」はもちろん登録商標であり、太宰府梅ケ枝餅協同組合が商標登録しています(商標登録506369号ほか)。
しかし第三者(露天商の60代男性)がこの商標を包装紙や宣伝用幕に使用して類似する製品を販売しており、商標権を侵害するという理由で逮捕されました。
報道によると、この男性は文字の字体が登録商標と異なるから許されると思っていた、とのことですが、この認識は誤りです。商標は外観だけで判断されるのではなく、同じ発音が生じると類似と判断されるからです。
ところで、この男性は「桜ヶ枝餅」という商標を「菓子」に商標登録していたとのことであり、せっかくこの登録商標を持っていたのなら、こちらを使えばよかったのに、と思います。
「梅ヶ枝餅」「桜ケ枝餅」を特許庁「J-PlatPat」(独立行政法人工業所有権情報・研修館)(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage)で検索してみましょう。
検索のやり方
J-PlatPatの「商標」→「商標出願・登録情報」の「検索項目」を「商標(検索用)」に設定し、「桜ケ枝餅」「梅ケ枝餅」と各々、入力し「検索」タブをクリックします。ありましたね。
This is a story of a registered trademark, “Umegae Mochi", which is a well-known product in Dazaifu-Tenmangu Shrine.
“Umegae Mochi" is, of course, a registered trademark owned by Dazaifu Umegae Mochi Cooperative (Trademark Registration No. 506369, etc.).
A third party (a male stall keeper in his sixties) had been selling similar products using packaging paper, advertising banners, and the like that all bore the trademark “Umegae Mochi", and was arrested for trademark infringement.
Reportedly, this man believed that the typeface he had used was different from the registered trademark and that its use was thus allowed; but this was his misunderstanding, because similarity between trademarks is judged not only from their appearance but also their pronunciation.
It was also reported that this man had a registered trademark, “Sakuragae Mochi", which he should have used from the beginning.
Let's search for “Umegae Mochi" and “Sakuragae Mochi" on the JPO website “J-PlatPat" (National Center for Industrial Property Information and Training) (https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopEnglishPage).
Searching for these trademarks:
Go to J-PlatPat's “Trademark" Section → Enter the Japanese phrases “桜ヶ枝餅" (Sakuragae Mochi) and “梅ヶ枝餅" (Umegae Mochi) individually in the “Trademark (for retrieval)" column of the “Japanese Trademark Database" page and click the “Search" button. Sure enough, the trademarks are there.
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
- だれでも弁理士になれる本
- 改正・米国特許法のポイント
バックナンバー
- 第294回2021.05.27
ファーストリテイリングがアスタリスクの特許を無効としようとしたが、知財高裁で敗訴 - 第293回2021.05.20
コロナワクチンの特許放棄の問題 - 第292回2021.05.13
「ステーキ宮のタレ」のレシピを掲載したことが話題 - 第291回2021.05.06
「お風呂が沸きました」のメロディーが音商標登録 - 第290回2021.04.29
炊飯をつくる方法特許 - 第289回2021.04.22
イオンが「ジャスコ」商標を出願 - 第288回2021.04.15
特許庁から漫画の審査基準が発行されました - 第287回2021.04.08
音楽教室訴訟が最高裁に上告される - 第286回2021.04.01
音楽教室での演奏に著作権使用料発生?の判決 - 第285回2021.03.25
ドトールから考えるブランドの高級感