第162回株価影響判決システム その3
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
先日以来紹介している「株価影響判決システム」(6,275,492号、(株)野村総合研究所)の特許のつづきです。
この特許は、判決に関する投稿者の発言から、裁判の勝敗を予測し、株価に影響を与えそうな判決をユーザに事前に知らせるという技術です。
このシステムの記事情報解析部は、投稿された記事の中で、たとえば以下のような会話から、裁判の勝敗を判断することが実施例に記載されています。
- 「勝つのは原告でしょ、やはりね。」
- 「被告が負けるのはしょうがないとして、…」
- 「原告勝訴は既定路線だが、…」
- 「原告に負けて欲しいけど、無理だろうな~。」
- 「原告が敗訴しそうだけど、…」
勝敗言及文が「被告が負ける」という記述を含んでいる場合、記事情報解析部14は、
「被告→敗訴」を認定し、「推定勝訴者:原告」の結論を導く。
「原告に負けて欲しいけど、無理だろうな~。」の勝敗言及文の場合、前半部分では「原告→敗訴」が示されているが、後半部分に「無理だろう」の否定語が現れているため、記事情報解析部14は、この勝敗言及文全体では「原告→勝訴」を表現しているものと認定し、「推定勝訴者:原告」を導き出」します。
このように、人間の投稿から結果を予測し、別の人間に通知する、という処理を行ってくれるシステムです。
特許6,275,492号 図5
This is a continuation of my post about the patent No. 6,275,492 entitled “a system for surmising adjudications affecting stock prices” (patent right holder: Nomura Research Institute, Ltd.).
This patent incorporates technology to predict the winners and losers of court decisions based on statements posted in articles related to the court decision, and notifies users in advance about court decisions that may affect stock prices.
It is described by way of example that the Article Information Analysis Unit 14 of this system determines who will win or lose the litigation based on conversations in posted articles such as those shown below.
- “Well, the plaintiff will win”
- “If we consider the defendant’s defeat as unavoidable…”
- “The plaintiff’s victory seems to be the likely course, but still …”
- “To tell the truth, I hope that the plaintiff will lose, but that’s probably impossible”
- “The plaintiff is likely going to lose, but still …”
If the sentences mentioning who will win or lose include the statement “the defendant will lose”, the Article Information Analysis Unit 14 recognizes that statement and concludes that “the expected winner is the plaintiff”.
If the sentence mentioning who will win or lose includes the phrase “I hope that the plaintiff will lose, but that’s probably impossible”, the Article Information Analysis Unit 14 recognizes that the entire sentence expresses “the plaintiff will win” and concludes that “the expected winner is the plaintiff” because although the first half shows “the plaintiff will lose”, the latter half expresses the negating phrase “but that’s probably impossible”.
In this way, this system processes expected outcomes from people’s contributions and informs its users of the results.
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
- だれでも弁理士になれる本
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