第164回日米が知的所有権で手を組むのは
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
前回のブログで、アメリカが中国に対し追加関税を課するニュースが報道されている話をしました。
日米の貿易協議では自動車や農業分野では完全には折り合っていないものの知的所有権では協力体制を築いていくことが合意されています。もちろん中国に対する牽制です。
共通の敵ができると対立している者同士であっても手を組むことはよくあります。まさに日米中は現在、そのような関係にあります。
アメリカのパテントトロール横行に悩む日本、そして1980年代の日米特許紛争を思い起こすと、日米が知的所有権で協力するといっても「今更」感が強いと言わざるを得ません。
逆に言うとこれは、それだけ中国の知的所有権における存在が増し、中国が日米にとって脅威的な存在であり、中国に対する日米の対応が急務であるという現状を示しています。
中国の知的所有権における脅威とは、模倣品の多発という中国にとってはネガティブな側面はもちろんのこと、中国特許庁に対する出願件数の伸びという中国にとってポジティブな面も背景には存在すると予想されます。
今後、1980年代の日米のような米中特許紛争が起こるのでしょうか。
In my last blog, I told you the news that America would impose additional tariffs on China.
Although Japan-U.S. trade talks have yet to reach any conclusions (especially for automobiles and agriculture), both countries agreed to construct a cooperative system for Intellectual Property with the aim of facing China.
Opposing parties may often collaborate against their common enemy, which is quite clearly the case given the current circumstances between Japan, the U.S., and China.
Thinking back on the rampart patent trolls in the U.S. that have been annoying Japan, or the Japan-U.S. patent disputes of the 1980s, I cannot help feeling that current efforts are “too late”.
This means, however, that China’s prominence has increased in the Intellectual Property world and exposed its threatening position against Japan and the U.S. Such circumstances should be handled promptly.
I think that the threat given by China—namely the frequent occurrence of counterfeits—may be a negative aspect, but there is also a positive aspect playing behind the scenes in the overwhelming number of patent applications coming from China.
I am afraid that U.S.-China patent disputes are likely to occur as they did in the 1980s between Japan and the U.S.
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
- だれでも弁理士になれる本
- 改正・米国特許法のポイント
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