第167回コレポンの翻訳が増えている
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
最近、よく海外代理人宛のメールやレターの翻訳を依頼されるようになりました。私の事務所でも毎日のように生じるのは海外代理人に対する出願や中間手続以来のメールやレターです。Google翻訳の精度が向上して翻訳者に依頼される翻訳案件は減ったとはいうものの、このような通信文の翻訳需要は日に日に増しています。
特許の中間書類の用語は特殊であり、
「国内移行して下さい」
「この出願は、国内移行の結果日本出願となりました」
「優先権を主張して出願してください」
「IDSしてください」
「本発明の趣旨から逸脱しない範囲で補正してください」
「請求項5を新設して、請求項1に従属させてください」
など、特許特有のことばやフレーズを用います。他の業界からはわかりそうだが、わからない文言が羅列されています。
特許翻訳は技術用語の置き換えで済むこともありますが、もしかしたら中間書類は機械翻訳に完全に移行するのは難しいと思います。
たとえば、上述の第2文中「国内移行」は、「PCT国際出願の国内段階への移行」と言い換えて訳す必要があります。これは機械翻訳ではできないことです。
Recently, I have been asked to translate emails and letters addressed to overseas attorneys. Also, in my office, emails and letters asking overseas attorneys to file applications or proceed with intermediary procedures have to be translated almost every day. Although the number of translations entrusted to translators has decreased due to the enhanced accuracy of Google translation, the demand for translations of such communication is increasing more and more.
The words and phrases used in intermediary documents for patent applications are unique to the patent industry. For example:
“Please enter into the national phase”.
“This application has become a Japanese application as a result of entry into the national phase of the PCT International Application”.
“Please claim priority”.
“Please submit IDS (Information Disclosure Statement).
“Please make amendments without deviating from the intent of the present invention”.
“Please newly establish Claim 5 and make it dependent on Claim 1.
These sentences list words and phrases which can be but are generally not understood outside the patent industry.
Patent specifications can sometimes be translated by replacing source technical terms with their translated words; however, translations of letters or intermediary documents will not be able to make the same shift to complete machine translation.
For example, the term “entry into the nation” should be rephrased and translated to “entry into the national phase of the PCT International Application”. This kind of revision cannot be done via machine translation.
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
- だれでも弁理士になれる本
- 改正・米国特許法のポイント
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