第168回任天堂がマリオのコスチュームやカートをレンタルした会社を提訴した事件
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
「マリオカート」ゲームで有名な任天堂(株)が、公道を走るためにマリオなどのキャラクターの衣装やカートのレンタルを行う被告会社((株)Mariモビリティ開発)を提訴していました。
このたび、東京地裁判決(平成29年(ワ)6293号)が下されたとの報道がありましたが、最高裁ウエブサイトを検索しても、この判決文を入手できませんでした。番号がわかっているのに判決を見ることができないのはとても残念です。
頼りになる情報源は、任天堂(株)の以下のニュースリリースです。
「公道カートのレンタルサービスに伴う当社知的財産の利用行為に関する東京地裁判決について」(2018年9月27日)
(https://www.nintendo.co.jp/corporate/release/2018/180927.html)
ここからわかる情報は、
- 「マリカー」標章等は、任天堂の著名な商品等表示として、被告会社の需要者にも広く知られている、と認定されたこと;
- 被告会社の行為、たとえばキャラクター「マリオ」等のコスチュームを貸与する行為が不正競争行為として、差止が命じられたこと;
- 被告会社に損害賠償金の支払いが命じられたこと
です。
つまり、コスチュームの貸与などの被告会社の行為が、不正競争行為と認定され、差止を認められたということです。
不正競争行為とは、この事件のように、他人の著名な商品等の表示を使用したり、使用した商品等を譲渡、引渡などする行為です。
さらに他人が創造したキャラクターの使用といえば著作権の問題があります。著作権について裁判所はどのように判断したのか是非、知りたいです。
キャラクターは著作権としても保護され、他人の著作権あるキャラクターを商品にプリントする行為や、これを縫いぐるみにする行為などは著作権侵害になります。
著作権の判断は、被告会社がマリオのキャラクターをどのように商品に使用していたかにかかっていると思います。この判決文が公開されたら伝えたいと思います。
Nintendo Co., Ltd., which is famous for the game Mario Kart, filed a lawsuit against Mari Mobility Development Inc. (the defendant company) for renting out costumes of Mario and other characters along with go-karts for driving on public roads.
The decision on this lawsuit was reportedly rendered by the Tokyo District Court (Case No. Heisei 29 (wa) No. 6293). I tried to browse this court decision on the Supreme Court website but could not find any hits, so it is somewhat regrettable even though the case number is clear.
The information source that I can rely on is the following news release announced by Nintendo Co., Ltd.:
“The Tokyo District Court decision regarding the act of using Intellectual Property of the Company when renting go-karts to be driven on public roads” (September 27, 2018)
(https://www.nintendo.co.jp/corporate/release/2018/180927.html, Japanese only)
This news release tells us that:
- the emblems and other markings for MariCar are well known by the defendant company’s consumers as displays for Nintendo’s famous goods and services;
- the defendant company’s acts (e.g., renting costumes of Mario and other characters) were found to be acts of unfair competition and were ordered to be suspended; and
- the defendant company was ordered to pay damages.
This means that the defendant company’s acts (including renting costumes) were recognized as acts of unfair competition and were ordered to be suspended.
Acts of unfair competition include using another person’s displays of famous goods or services, or transferring or delivering goods or services that use such displays, such as in this case.
The use of characters created by another person causes copyright problems, so I want to know what judgment the court laid down about the copyrights of these characters.
Characters are protected as copyrights and the act of printing another person’s copyrighted character on products—or, for example, making a stuffed toy from it—constitutes copyright infringement of the character.
I think that the judgment regarding copyright infringement depends on how the defendant company used Mario and the other characters. As soon as the court decision is released, I will write about it.
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
- だれでも弁理士になれる本
- 改正・米国特許法のポイント
バックナンバー
- 第294回2021.05.27
ファーストリテイリングがアスタリスクの特許を無効としようとしたが、知財高裁で敗訴 - 第293回2021.05.20
コロナワクチンの特許放棄の問題 - 第292回2021.05.13
「ステーキ宮のタレ」のレシピを掲載したことが話題 - 第291回2021.05.06
「お風呂が沸きました」のメロディーが音商標登録 - 第290回2021.04.29
炊飯をつくる方法特許 - 第289回2021.04.22
イオンが「ジャスコ」商標を出願 - 第288回2021.04.15
特許庁から漫画の審査基準が発行されました - 第287回2021.04.08
音楽教室訴訟が最高裁に上告される - 第286回2021.04.01
音楽教室での演奏に著作権使用料発生?の判決 - 第285回2021.03.25
ドトールから考えるブランドの高級感