第175回マリオカート事件 その3
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
「マリオカート」ゲームで有名な任天堂(株)(原告)が、公道カートをレンタルする被告((株)MARIモビリティ開発)を提訴した事件(平成29年(ワ)6293号)の続きです。
いくつか判断がされており、その一つです。
被告のドメイン名には「maricar.」「maricar.co.」「fuji-maricar.」が含まれており、このドメイン名の使用禁止の判断がありました。
「.jp」「.co.jp」「.com」はドメイン名には共通する部分であり、「maricar」「fuji-maricar」が出所表示機能を有する部分であること、「fuji」は付加された部分に過ぎないこと、そうすると、「maricar」は任天堂(株)の周知な文字表示「マリカー」と類似であり、これは周知であったため、
「原告の公認あるいは協力の下で本件レンタル事業を営んでいるかのような外観を作出し,不当に利益を上げる目的があったものと認めることができる」と判断されました。
ドメイン名も取引する際の重要な出所表示になるため、不正目的で他人の商品等表示と同一又は類似のドメイン名を用いるのは不正競争行為になります。
This blog is a continuation of the case in which Nintendo Co., Ltd. (the plaintiff), a company famous for the game “Mario Kart”, filed a lawsuit against Mari Mobility Development Inc. (the defendant), a company that rents out go-karts for driving on public roads (Case No. Heisei 29 (wa) No. 6293).
The Tokyo District Court reached multiple verdicts, one of which is that the defendant shall stop using domain names that include the character strings “maricar.”, “maricar.co.”, and “fuji-maricar.”.
The court judged that “.jp”, “.co.jp”, and “.com” are common parts in domain names; however, “maricar” and “fuji-maricar” are parts that indicate an origin. Assuming that “fuji” is merely an added part, domain names containing “maricar” are similar to the katakana expression for Nintendo’s well-known game.
The court found that the defendant “constructed a façade that [they] conducted this rental business under the official approval of or in cooperation with the plaintiff, with the intention of wrongfully earning benefits”.
A domain name is an important indication for transactions; using a domain name that is identical or similar to another person’s indication of goods, etc. with illegal intentions is an act of unfair competition.
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
- だれでも弁理士になれる本
- 改正・米国特許法のポイント
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