第194回アメリカと中国の保護貿易
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
アメリカが中国に高い関税をかけることは、保護貿易の最たるものです。そして中国が知的所有権を侵害したり、外国企業に技術移転させることも保護貿易の一種だと思います。モノやサービスの自由な流通を他国に禁止しているからです。
保護貿易は一般には、国内産業の保護育成という趣旨により行われます。これは経済的に弱い国々の保護のように思われますが、アメリカと中国は経済的に弱い国ではありません。
TPP11が関税の撤廃をうたっており、自由貿易の方向に向かっているのに、TPP11に加盟していないアメリカと中国は相変わらず保護貿易に固執しています。
ところでTPP11が知的所有権の保護を促進するといっても、すべての国がこれに加盟しないと、真の意味での知的所有権保護は達成されないと思います。知的所有権は国境をまたがって様々な国に移動し、侵害されるからです。
The US imposing high tariffs on Chinese products is the uppermost example of protective trade. I think that China infringing upon Intellectual Property rights or pressuring overseas companies to transfer their techniques is also one type of protective trade because these acts prohibit the free flow of products and services.
Protective trade is generally enacted to protect and develop domestic industries, which would serve to protect economically developing countries. The US and China, however, are not economically developing countries.
TPP11 cites the elimination of tariffs and progression toward free trade, while the US and China still adhere to protective trade.
On another note, even if TPP11 promotes the protection of Intellectual Property rights, its real protection will not be realized unless all countries join, because Intellectual Property rights are transferred and infringed upon across various national borders.
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
- だれでも弁理士になれる本
- 改正・米国特許法のポイント
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