第205回環境省のウナギのツイートが問題に
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
環境省の「土用のウナギはご予約を」という公式ツイッターが問題になりました。
- ウナギは絶滅危惧種(*)であるのに、食べることを勧めていること、
(*)国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種(レッドリスト)に「二ホンウナギ」が掲載されています。 - もっと問題なのは、ウナギの画像が、「ぐるなび」(飲食店サイト)に掲載されていたある料理店の画像だったことです。
子供の著作権教育を急ぐべき、とこのブログで再三、言ってきましたが、社会人にも著作権教育が必要なようです。
しかし、ウナギを勧めることを私はそれほど問題と思っていません。実際に商品として販売されているからです。本当に絶滅を防ぐのであれば、商品の流通自体を禁止すべきであり、消費者が好んで食べていることも事実です。
それにしても、あえて土用の日だからといって、皆が一斉に鰻を食べる必要はないと思います。習慣、言い伝えから「特定の日に特定のものを食べる」ことはありますが、そのような儀式はどんどん日本では排除される傾向にあります。
むしろ、このような習慣を排除すべきとのツイートをすれば、消費者の好感を得たと思います。
著作権に関して言えば、このツイートに画像を載せる必要はあったでしょうか?
今は画像を通して情報を認識する時代です。
「土用のウナギはご予約を」と文章で書いただけでは、人々の注目をひかなかったでしょう。食品ロスを防ぐだけでなく、ウナギを食べて欲しいという意図が感じられます。
脂ののったウナギの写真だからこそ、人々の注意を喚起できる、しかしこの写真が著作権問題という注意を喚起してしまいました。
脂ののったおいしそうなウナギの写真を撮るには、撮影技術が必要です。
ここに著作権が存在しています。
絶滅危惧種をおいしそうに料理した状態の写真、しかも他人の撮影した写真を掲載したこのツイートはやはり非難されるべきでしょう。
The official Twitter message from the Ministry of Environment, “Make sure to reserve eel on the midsummer day of the ox” caused the following problems:
- Eels are endangered species* but have been recommended for consumption.
*Japanese Eel is listed on the Red List of Threatened Species of the IUCN (International Union for Conservation of Nature) - What is a more serious problem is that a picture of eel in this tweet was taken from a picture of eel served at a certain restaurant listed on Gurunavi (a restaurant information site).
In this blog, I repeatedly point out the necessity of educating children about copyrights, however, adults appear to be the ones who need to be enlightened about copyrights.
I, however, think that recommending eel for consumption is not so problematic, because eel is actually marketed as a product. In order to prevent extinction of eels, their sales should be prohibited. Indeed, consumers are willing to eat eel.
Nevertheless, I think that it is not necessary for everyone to eat eel on the midsummer day of the ox. Japanese people “eat certain food on a certain day” in accordance with tradition or lore, but such ceremonies are gradually being eliminated.
Rather, tweets to eliminate such a custom would give a more favorable impression to consumers.
As for copyrights, I wonder if this tweet should be accompanied by a picture.
Today, people realize information through images.
A text-only sentence, “Make sure to reserve eel on the midsummer day of the ox” would not attract consumers’ attention. I feel an intention of not only prevention of food loss, but also the desire for consumers to eat eel from this tweet with the picture.
A fatty eel picture can attract people’s attention but unfortunately, this one attracted a copyright problem.
Taking a picture of a delicious-looking fatty eel requires photography techniques, which means it has copyright.
This tweet with another person’s picture of an endangered spices that has been deliciously cooked should be criticized.
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
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